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03
ひまわりのような
君へ


「神父さん、なまえちゃんとは仲よう暮らしとるかい?」
「ええ。毎日喧嘩せず、穏やかですよ」
「そうか、そうか。あの子はええ子だからね、大事にしてあげんとね」
「はい」

書類を書くためのインクがなくなり、丁度他のペンも切らしてしまった時のこと。

カンカンと窓から降り注ぐ夏の日差しに一瞬ためらったものの、今日中に終わらせたいですし、と気持ちを奮い立たせジリジリと焼けるような陽の下に出て坂を下りた。
ようやく近代的になってきたとはいえ、まだまだ極東ののどかな場所では地元の方々がお店を営むのが主流となっており、行きつけの歴史を感じさせる古風な文房具屋さんへ足を運んだ。

ところで、なまえさんは顔が広い。
地元の方の憩いの喫茶店で働いているのも相まって、よそ者と弾かれることなく、気づけば商店街の方々から愛されていた。
私のことも随分気に掛けていただいているおかげで、私となまえさんのことを知った方はみな優しく祝福してくれて、本当にここは優しい方々が多く、有り難いことだと恐縮する。

文房具屋を営んでいる橘さんという、70を超えてもまだまだ元気なご老人は特になまえさんを自分の孫のように気に入っており、目的のインクと予備のペンを購入しながら、世間話ついでにしみじみ語る橘さんの言葉に頷く。

「年寄りのいらぬ心配かもしれんがね。神父さんだから結婚とかは難しいかもしれないけれど、結婚だけが全てじゃないから。大事なのは、互いを想い合う気持ちだからね」

しわがれた声だが、それでもしっかりとこちらに掛けてくれる労わる言葉に。照れ臭くもじんわり染みる優しさを噛み締めながら、先ほどより強く頷く。

「ありがとうございます、橘さん」
「はは。まあ、二人なら大丈夫だろうと思うがね。まあでも、なまえちゃん相手だと色々やきもきするかもしれないねぇ」
「やきもき?」

意味深なことを仰る橘さんの言葉に首を傾げていると、カランコロン、と店内扉につけられた古い銅のドアベルが響く。
「こんにちはー!」と元気よく来店したのは、近所の穂群原学園に通う女学生の子達。どこかで覚えのある顔ぶれに、確かなまえさんが勤務している喫茶店によく来ていましたね。と、頭の片隅で記憶を引っ張り出しながら、彼女たちを出迎える橘さんから品を受取り、会釈し立ち去ろうとする。
と、女学生たちの一人が「あ!」と私の顔を見て立ち止まった。

「こんにちは!もしかして、なまえちゃんの彼氏の、神父さんですよね!」
「こんにちは。ええ、いつもなまえさんがお世話になっています」

礼儀正しくぺこりと会釈し挨拶する女学生に、こちらも会釈して応える。お連れの方も、ああ、と納得すると続くようにこんにちは、と挨拶してくださった。
挨拶して、それでは。と終わるかと思いきや、女学生が立ち止まったまま立ちはだかり、こちらの顔をじっと見つめ、なるほどこれは勝ち目ないわ。と一人得心が行ったようにつぶやく。お連れの方がこら、と窘める声も聞かないので、知らぬ間に何か不義でも働いてしまったのだろうか…と首を傾げる。

「あの、なにか…?」
「え、あっ、ごめんなさい!じろじろ見て!違うんですこちらの話しで!その!」
「真子、神父さん困ってるから…」

手を振り慌てて弁明する真子さん、と呼ばれた女学生の言葉にますます首を傾げる。
奥で見ていた橘さんも思い当たる節があるのか、「あー…」とつぶやくので、当の本人である私以外皆さん何か意味がわかっているのか、たまらず「何かあったのですか?」と聞いてみれば。三者三様、顔を見合わせ一瞬悩んだ顔をされた後に橘さんが口火を切った。

「んー…神父さんに言うべきじゃないかもしれないがね、うちの孫がこの間なまえちゃんに告白してねぇ…」
「その孫ってのが、うちのクラスの男子でして…」

ああ、と皆さんより遅れて合点がいき。
なるほど、なまえさんが告白を。と納得し、

「………え?」

思わず、素っ頓狂な声をあげた。

まったくの初耳の情報に、目を点にして固まっている私を見て、皆さん。特に話しのきっかけを作った真子さんが慌ててつっかえながら身振り手振りを交えて全容を説明してくださった。

真子さんのクラスメイトで橘さんのお孫さんが、なまえさんが勤務する喫茶店の常連らしい。
元々学生に人気のお店だったということと、なまえさんの面倒見のよさから、学生相手に試験前のみ講師のようなものを無償で買って出ているとかで。そこで勉強を熱心に見てくれるなまえさんに恋心を抱き、私と交際中なのを承知の上で先日告白したらしい。
けれどもそれはすぐなまえさんがその場で断り、相手方もそれを受け入れ。すでに二人に遺恨はなくもう何でもないことだと必死に真子さんが弁解した。

いつもなまえさんとは1日にあったことを語り合うが、そういった事は一言も口にしていなかった。彼女なりに私を思って黙っていてくれたのは明白で、彼女の人となりを見ればその方が恋心を抱くのも、納得出来る。

けれども、心臓の奥がさーっと冷えていくような錯覚が消えず、体の硬直が解けない。

「あーあ…真子が変な反応するから…」
「だっだっていつもなまえちゃんが話してくれる彼氏さんってどんな人か見たことなかったし、つい…」
「すみません神父さん…あまり気持ちのいい話題じゃなくて…」

不意に向けられた言葉で完全に硬直は解け切らないものの、咄嗟にいえ大丈夫ですから、と返す。が、よほど説得力のない顔をしていたようで、皆さん渋い顔が晴れることはなく。
二、三別れの言葉を交わした後、心配そうにこちらを見る皆さんに会釈し早々にお店を去った。


足取りはいつもどおり。特段、肩が重いということはない。
けれども、話しを聞いてから胸のざわつきが取れない。

なまえさんは、とても優しい方だ。
薄々私に何かあるのを察して深く聞いて来ないばかりか、無理して話そうとしなくていいとこちらを気遣ってくれる。彼女は生きられる時間が限られているのに、好奇心もあるだろうに。その命を終えるまでに私から聞くことが出来なくても、仕方がないと割り切ろうとしてくれている。

自分がとても残酷なことをしているのは、わかっている。本来なら私のような男が、彼女を愛す資格などないし、それが許される人間ではない。自身を許すことなど出来ない。
彼女の優しさと弱さにつけこみ、手篭めにしたと非難されれば、否定も出来ない。

それでも、彼女に惹かれた。
彼女に笑いかけてもらえるたびに、かつての自分ではなく。今を生きる“シロウ・コトミネ”が愛されていることを痛感しながらも。彼女の笑顔に、自分がどこにでもいるありふれた、ただの一人の男でいいと許されているような気がしてしまった。

でももし、自身のことを打ち明けて、受け止めてもらえなかったら。もし、私に業を煮やして離れて行ったら。
そのもし、を完全に否定は出来ないことに、先程気付いた。
どうして今までその考えに至らなかったのだろうか。それとも考えたくなかったのか。
いつもならすぐにでも気づくようなことを見落としてしまうほど、自分がいかになまえさんとの生活を心地よく思っているのか、改めて思い知らされる。

なまえさんは素敵な方だ。私のように、恋心を抱く者はこの先も現れるだろう。
私よりも平凡で、清廉潔白で、誠実な方が現れれば。もしかしたらなまえさんも揺らいでしまうかもしれない。
もし、そうなった時。なまえさんがほかの誰かと幸せに生きることを、私は受け入れられるのだろうか。

じりじりと地面を焼き付け揺らめく蜃気楼を見つめながら、答えの出ない考えが反芻する。
そのまま帰宅する気になれず、なんとなしに足の赴くままにたどり着いた公園へと踏み入れる。
夏休みの最中だからか、遊具で遊ぶ子どもたちの姿と笑い声が聞こえる。いつの世も無邪気にはしゃぐ子どもを見ていると、心が安らぐ。

「…お姉ちゃんとれるー?」
「大丈夫!必ずや、たかきくんのボール取りますからね!」

ふと、聞き覚えのある声が耳に届く。
公園隅の森林の下で、子どもたち数人に囲まれているなまえさんの姿を見かける。
働きに出る以外自由に過ごしている彼女と町中で出会うのはたまにあるものの、こんな炎天下に公園で見かけるのは初めてだったので、引き寄せられるように彼女らの元へ行く。

木の枝を持って木に引っかかったボールを取ろうと汗水たらして奮闘するなまえさんに大丈夫ですか、と声を掛けると、振り返って私の姿を確認するや否や、にぱっ、と屈託なく子どもたちのように無邪気に笑った。

「シロウさん!大丈夫ですよ、あとちょっとでボールが取れるところですから!」
「お姉ちゃん10分前にも同じこと言ってたよ」
「香織ちゃん、それは言わないでいてほしかったな」

子どもの素直な非難する声に、子どもたち相手ということでいつもより幾分砕けて応えながら拗ねるなまえさんの姿に、思わず笑ってしまう。
笑ったせいでこちらにもジトリ、と拗ねた視線を向けられるが、本気で怒られている気がせず、すみません、と形ばかりの謝罪になる。
ますますむくれた様子で、なまえさんはボールを叩いて落とすことを優先してしまった。

すっぽり枝と枝に入ってしまったのか。いまいち高さが足りてないことで威力が不足しているのか。
一向に落ちる気配のないボールと、疲労の影が見えるなまえさんを見て、失礼します、と一言断りをいれてからなまえさんの手から枝を拝借し、とんとん、と叩く。
どうやら力も高さも足りなかったようで、想像よりもあっさりと少しずつボールが軽快に枝からずれていき、ぽんと抜けると地面へと落ち跳ねながら子どもたちの手に戻った。
大喜びでありがとう、という声と、お姉ちゃん大丈夫?という心配の声が多重に掛けられる。

「神父さんありがとう!」
「いえ、どういたしまして。今度からは、あまり高く飛ばしすぎないように気をつけるんですよ」
「うん!」

ボールの持ち主であるたかきくん、という男の子がこちらにお礼を述べる。
目上の男性にも物怖じせず、きちんとお礼を言えて注意も素直に聞き入れ、にこにことなまえさんや友達の輪へ混ざっていく様子を見てしっかりした子だ、と思わず関心する。

すると自身の足元にまだ小さな女の子が残っており、こちらを見上げていた。
今日はよく顔を見られる日ですね、と思いながら、どうしました?と目線の高さをあわせるように屈む。

「神父さんって、もっと怖い人だと思ってたけど、優しいのね」
「そ、そうですか…?」
「うん。なまえちゃんを見る神父さん、うちのお父さんがお母さんのこと見る時の目に似てる」

子どもの観察眼を侮っていた訳ではないけれど、聡明な子だと驚いてしまう。
考えが読めないと言われることは多々あれど。目に見えて分かると指摘されるのは初めてのことで、心の内を把握されるというのはこんなにも恥ずかしいことなのだと、照れくささを紛らわすように頬をかく。
女の子はちらりと子どもたちに囲まれているなまえさんを見遣ると、内緒話をするように体を少し丸める。

「神父さんは、なまえちゃんのこと好き?」

こそ、と耳元で聞かれた問いに、思わず私もなまえさんに目を向ける。

取り戻したボールで子供たちと一緒に遊ぶなまえさんの姿は、無邪気で満面の笑みで。先程こちらを見た時の、あの喜色満面の笑みを思い返す。
私を見つめるなまえさんの目は、いつもあたたかな愛情を感じさせる目をしている。それは今まで他の人にも同じように向けているものだと思っていたが、今この子に指摘されてよくよく見てみれば。今子どもたちを向けるものと、先程の目の色は違っていて。その事実に、嬉しさがこみあげる。

自身の言葉を待つ女の子に、笑って「はい」と告げれば。女の子は安心したようにふにゃりと笑った。

「よかった。神父さんのこと聞くと、なまえちゃんたまに悲しそうにしてたから。神父さん、なまえちゃんのこと嫌いなのかなって」
「なまえさんが?…何があったか、言ってましたか?」
「ううん。聞いても全然教えてくれないの。大丈夫だから、って」

だから、なまえちゃんを大事にしてあげてね。
女の子はそれだけ伝えたかったのか、言い終わると自身もなまえさんたちのところへ駆けていく。

誰もが私となまえさんを案じ、幸せを願っている。なまえさんの顔を愁色させたのが自身であっても。
人はこれほど、優しかっただろうか。信仰のない者でも、自分よりも誰かの幸せを願うことがあるのだろうか。

長い間旅をし、すべて聖杯のために準備してきた。
義父が亡くなり、意図的に疎遠になったとはいえ自身を養子にしてくれた恩義を返すために、聖杯が現れるまでの間だけと。彼が生涯守ってきたこの冬木の教会に来てから、町の方々と交流がなかったわけではない。見知らぬ人間であっても、今と変わらず優しかった。
それなのにどうして、今はこんなにも身に染みるのだろうか。

「シロウさん、シロウさん!」

子どもたちと手を振って別れたなまえさんが、こちらへ駆け寄ってくる。
陽の光に照らされた花のように開いた笑顔をしているなまえさんは眩しく、綺麗だ。
猛暑の中で遊んだせいか息を切らしていたが、ふぅ、と呼吸を整えると、にっこり笑って私の手に指を絡ませ「シロウさん、帰りましょう」としっかりと手を握った。

私よりも柔らかく、小さな手。あの夜のように、襲われてしまえば負けてしまうほどの細腕と、短命を感じさせぬほど晴れやかな笑みを浮かべる、愛しい彼女。その全てが今、自分に寄り添っている。孤独ではないことというのは、これほど胸が苦しいのか。

「なまえさん…」
「ん?」

呼びかければ、笑みを絶やないまま小首を傾げこちらを見上げる。
優しくこちらの言葉を待つ彼女と繋ぐ手を痛くしないよう力をこめた。

「なまえさんは、私でいいのですか」
「…えっと…というと?」
「先ほど真子さん、という方にお会いしまして。先日なまえさんが告白されたというお話しをうかがいまして」
「……真子ちゃん、しゃべりましたね」

恨めしそうにここにいない真子さんへそうこぼすなまえさんに、やはり私に気遣って黙っていてくれたのかと苦笑いする。
あまりよくない私の顔色を見ると、なまえさんはごめんなさい、としおらしく頭を下げる。聞いて面白い話しではないからと黙っていたことを謝罪する必要はないのに、なまえさんらしい。

「気にしないでください。私に気遣って伏せていたのは、分かってますから」
「はい…あ、断りましたから!お、お付き合いしてる方がいるのでって…!」
「ええ。それもお聞きしました」

いまだ私との交際を口にするたび恥じらいを見せるものの、きっぱりと告げる彼女に頷いて見せれば、ほっと安堵したように胸をなでおろす。

どれだけ日の下にいたのか分からないが、暑さで顔が火照っているなまえさんに引き止めてしまったことを謝罪し、手を優しく引き行きましょうか、と声を掛ける。
公園を出て、教会までの道のりにある坂につけば、自然と軽やかだった足取りも重くなり、ゆるやかに登る。
町の向こう側に見える海が、夏の日の光に反射しきらきらと水面が光っていた。

「…不謹慎かもしれないんですけど、」
「はい?」
「シロウさん、気にしてくれたんですね。告白のこと」

肩越しに振り返れば、なまえさんは先程の笑みよりもゆるりと笑っていた。
確かに自らやきもきしたことを告げたようなもので、なんと格好の悪いことかと、決まりが悪くええ、まあ…と濁せば、なまえさんはたまらずくすくすと笑みをこぼす。

「いえ、すみません。シロウさん大人びているので、そういうの気にしないのかなーと」
「…私も驚きました。ええ、それはもう。思い悩んでしまうほどに」
「ご、ごめんなさい…」
「いえ」

不思議と、彼女と話していくうちに胸の中にあった影が晴れていく。
軽口まじりにこぼした本音に逐一身をすくませるなまえさんの姿が面白く、こちらもつられて笑ってみせれば硬かった表情がまたふにゃり、とゆるむので、可愛らしいと胸の内にこぼれる。

「…なまえさんは、」
「はい?」
「私で、本当にいいのですか?」
「はい!」

ふと、先程掻き消えてしまった質問を繰り返し問うてみれば、答えはすぐに返ってきた。その迷いのない答えに、胸が夏の日のようにまたじわりと熱くなる。
するり、と指先から柔らかな手が離れ、肩を並べていたなまえさんが数歩先へ駆けていくと、くるりとこちらと向き合う。

「こういうの、何度もぶち当たる疑問ですし、何度口にしてもきっとまた迷ってしまう問題で、いくら私がたくさんの言葉を尽くしても、晴れるものではないですけど。でも、気にせずいくらでもぶつけてください。私、何度だって答えますから」

私は、シロウさんが大好きです。

私の不誠実さも迷いも、すべてを受け止めてくれるほどの晴れやかな告白だった。
なんて強さと、高潔さなのだろうか。

彼女は今まで自身の生い立ちと自身を拒む周りを恨み、妬み続けてきた。それをすっぱりと捨て、戻ることも拒み。そうして今、私のすべてを許すと受け止めた。
彼女の半生を聞いて、立場や願いは違うけれども、どこか似ていると思っていた。同じように人から虐げられ、捨てられた立場だと。
けれど、それは違っていた。自身にはこれだけ深く他人を愛する気持ちなどなかった。人をこれほど許容できる強さなどない。それを彼女は、持っている。

だから、彼女に惹かれたのかもしれない。まだ人を信じてみたいと、彼女を通して願ったのかもしれない。
皆の希望になれと、求められてから。私が捨ててしまった人としての”当たり前”のすべてが、彼女にはあった。

ようやく、はっきりと自覚した。
私は、なまえさんが誰かと幸せになることなど、受け入れられない。
聖杯を求め続けることに変わりはないし、彼女に対し不誠実なままでい続けることにも変わりはない。今までの自分をまた、裏切ることになる。

これは、互いを苦しめるだけの願いだ。
それでも、私は。

「…私も、なまえさんを愛しています」

ずっと口にするべきか迷っていた言葉を、ようやく告げる。

なまえさんは不意をつかれ目をきょとんと丸くすると、次第に顔を赤らめ、それでも嬉しさを隠しきれない笑みをほころばせながら、はい、と噛みしめるように頷いた。
なまえさんに歩み寄り細い指先にゆるりと絡ませ、互いに笑い合う。

「なまえさん」
「はい、シロウさん」
「…今夜、長い話になるかもしれませんが。聞いていただきたいことがあります。お付き合い、願えますか?」
「…っ、はい」

これが正しい決断かは分からない。それでも、こちらに惜しみなく笑って見せてくれる彼女に、せめて自分に出来る精一杯のことをしたいと、強くそう思った。