俺はかつて、人々に化け物だと恐れられ、人目を避けるように生きていた。家族を含む他者と関わることもせず、自分は独りなんだとそう思い込み生きていた。
『我愛羅は独りじゃないよ。私がいる』
人を殺すことに自分の生きがいを感じていた俺に、そう笑って差し伸べてくれたお前の手も振り払って生きていた。俺が何度近づくなと睨みつけても、お前だけはへらりと笑いずっと俺のそばをうろつき続けたな。
『ほら、我愛羅はこんなに優しく笑えるじゃん』
あれはいつだっただろうか。そうだ、うずまきナルトに出会い、愛というものを知った頃だ。 ずっと振り払っていたお前の手を気まぐれにとると、お前はいつも以上に嬉しそうに、そして綺麗に笑い、そう言ってくれた。
『我愛羅はみんなの前に立てる人だよ。みんなが我愛羅の背中を見てついて来てくれる日がきっと来る。本当の我愛羅のことをわかってくれる日が必ずくるから』
俺が少しずつでも皆に認めてもらえるようになれるだろうか、風影に、なれるだろうか、と弱音を吐けば、今度はお前から俺の手を取り、そう笑ってくれた。
『我愛羅の頑張りはみんなが見てるから。だから自信を持って。必ず我愛羅は風影になるよ』
なんの根拠もないそんな言葉も、お前に言われれば本当に叶う気がしたから不思議だ。
「ナマエ」 「んー?」 「俺はお前に感謝している」 「…どしたの突然」 「俺は今ここにいられるのは、お前がずっと俺を見捨てないでいてくれたからだ」 「!」
隣に立つナマエの手をそっと取れば、途端に頬を赤らめて真っ直ぐと前を見た。
「俺は今日、風影になる」 「…うん」 「きっとこれから、これまで以上に忙しい日々になるだろう」 「、うん」 「だが俺は…お前に、そばにいてほしい」 「…」 「これからも、俺のいちばんそばにいてくれるか」
顔は見られずにそう前を見たまま問えば、俺と繋いでいる方とは反対の手で、目をこする仕草をしたナマエ。
「…もちろん。私はずっと、我愛羅のそばにいる」 「…ありがとう」
君はどうか透明なままで
fin.
匿名様リクエストで、我愛羅を書かせていただきました。お気に入りいただければ嬉しいです。
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