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「…い。おい、ナマエ?」
「……せん、せい?」



優しい声に身体をゆすられて目を開けた。すると先生が心配そうな顔であたしをのぞき込んでいる。



「どうしたの、ソファで寝るなんて。風邪ひくから、寝るならベッドで寝なさい」
「…ごめんなさい」
「いや、いいよ。ただいま」
「おかえり」



のそっと体を起こすと、先生はお風呂上りなのかほっこりと温かい手であたしの頭を撫でてくれる。

…ん?お風呂上り?……え!?



「い、今何時!?」
「え…九時だけど」
「うそ、九時!?え、どうしよ!ご飯作ってない!!」
「あー大丈夫だよ、作っといたから」
「…あーもう最悪。本当ごめんなさい」
「いいってば。それよりどうした?ずいぶん熟睡してたけど」
「!…あー、ううん。なんでもないよ」
「…」



自分でもわかりやすいくらい挙動不審になりながら言ったけど、先生のジト目があたしをじっと見つめてきて息を詰める。昔から先生に嘘は通じないんだよなぁ…。



「…なんかあったなら言って。隠し事はなしだよ」
「…本当に、なんでもないんだってば」
「嘘つくな。お前のなんでもないは信じないよ」
「…」
「ねぇ、ナマエ」



今は言いたくなくて顔を伏せたあたしの隣にゆっくりと腰かけた先生は、あたしのほっぺを両手で挟んで無理やり上げさせた。



「もし体調が悪いんだったら無理しないで。別に隠すことはないし、むしろ言ってくれた方が助かる」
「…」
「俺、お前にちゃんと言ってもらわないと何もわかんないし、何か俺が治した方がいいところがあるならそれも言ってほしい」
「っないよ!そんなのひとつもない!」
「…じゃあどしたの?」
「…っ」



やっぱり心配そうな顔をしてあたしをじっと見つめる先生に、これ以上黙ってることはできないと思った。
もし先生が子供が出来たことに賛成してくれなかったとしても、あたしはこの子の母親なんだもん。ひとりでも産んで、きっと立派に育ててみせる。

そう決めて、だんだん緊張してばくばくうるさい心臓をだますようにふーっとため息をついてから、あたしのほっぺを挟んだままの先生の手を離すように握った。



「…先生、あのね、」

「ん?」

「……赤ちゃん、できたの」



あたしがそう言った瞬間、先生はぴしりと固まった。




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