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※こちらの作品は『こたえは、たったひとつ』の続編です。先にこちらをお読みいただいてからの閲覧をおすすめします。








「…どうしよう」



まだ全く実感はないけど、ここに新しい命があるらしいお腹を撫でながら独り言ちた。
最近ずっと体調が悪くて、サクラに相談したらとりあえず病院に行くように言われて、行った病院でお医者さんから『おめでとうございます、妊娠三ヶ月ですよ』って笑顔で宣告。やっぱり実感もなくて、ありがとうございますとだけ言って病院を出てきたけど、言われたときにあった嬉しい気持ちは歩いているうちになくなっていって、先生にどう言おう…そんなことで頭がいっぱいになってため息が出た。


カカシ先生と結婚して、もうすぐ一年。
この一年はすごく幸せだった。先生もあたしのことを大切にしてくれるし、約束した通りできるだけ一緒にいる時間も作ってくれた。

でも、やっぱり火影様は忙しい。
毎日疲れた顔で帰ってくる先生にできるだけ心配はかけたくなくて、正直いろいろ我慢している部分もある。本当はもっと一緒にいたいし、先生を手助けできることならなんだってしたい。だけど先生は、“家にいてくれるだけでいいよ”っていつも笑うだけ。そんなの夫婦の意味ないじゃんって思うけど、せっかく一緒にいられる貴重な時間にケンカしたくなくて。



「…先生、喜んでくれるかな」



先生は、子供が好きだ。もともとは嫌いだったらしいけど、あたしたちの世代の担当上忍になって変わったって言ってたっけ。アカデミーによく視察に行ってるし、紅先生とアスマ先生の子供のミライちゃんのことも気にかけてるって。だからきっと、喜んでくれるはず。だって先生は、父親になるのが夢だとも言ってたもん。

…だけど、負担にならないかな。
ただでさえ毎日しんどい思いをして火影として里をまとめてるのに、あたしが妊娠したなんて聞いたらきっともっと無理をして仕事を切り上げかねない。先生はそういう優しい人だ。



「…まだ、言うのは今じゃない」



そうだ、今は言うべきじゃない。もう少し後でも、いいはずだ。

なんだかどっと疲れて、ソファに身体を預ける。
あたし一人の身体じゃないんだもんね。ここに、あたしと先生の、子供がいる。やっぱり実感はないけど、あたしはこの子のお母さんなんだ。しっかりしなきゃ。

とは言いつつやっぱり精神的に疲れたのか、だんだんと重くなってくる瞼に逆らうことなく、先生が帰ってくる少し前まで仮眠をとることにした。




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