自分の両足で立ち


薄暗く部屋を照らす光に手を伸ばしそっと拳を閉じる


夢じゃない


今まで無かったモノがもうここにある


だが元からあったように違和感が無く不思議な感覚だ


そして俺の中に薄く残るあの子の呪力がとても心地良い



「宮内、、、」



人間とは欲深い生き物だ


ずっと欲しかったモノを手に入れても満足することなく


また新たに欲しいものができてしまう


抱きしめた身体は小さく、柔らかかった


部屋にまだあの子の優しい香りが残っているような気がして


それを辿るように足を動かす



「まだだ、まだ俺は、、、」



呪詛師夏油の一味である真人との縛りがまだ残っている


俺と真人との間に架せられた縛りは正直もう意味がない


夏油側が京都校の人間に手を出した時点でそれは破られていたが


俺は俺で真人の術式を受ける事なく、そして俺の意思ではなく第三者の意思により
欲しかった"普通の"肉体を得た


呪力量に影響が無かったのは嬉しい誤算だ、、、





スマホが震えたので見ると、手紙を読んだのか宮内から連絡が入っていた


こんなに鼓動が速まることは今まであっただろうか


画面に映し出される文字すら愛おしく感じてしまう


早くまた会いたい


傀儡ではなくこの手でまたあの子に触れたい


控えめな、それでいて優しげな笑顔をまた向けて欲しい


寂しさを誤魔化すように


画面が消えてしまったスマホをそっと撫でた





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