3 「、、、そんな事情があったのに治してくれたのか」 「同じように視えてる人だし、悪い人じゃなさそうだったから、、、あ、あの、外で友達が待っているかもしれないので、失礼します」 今会ったばかりなのに 俺を悪い人じゃなさそうと笑うその顔に 鼓動は早くなるのに脳は異様に落ち着いていて 彼女が床からノートを拾うのを見て 思わず口が開く さっき呪霊に投げたのはノートだったのか 「、、、それは本当に友達なのか」 「っ!!」 デカいのを祓ったからか帳が上がり更にくっきりと彼女の顔が見える 核心をついたであろうそれは きっと彼女を傷つける言葉だったに違いない 「普通友達に自分の忘れ物を夜中に1人で取りに行かせないだろ」 「それは、、、」 傷つけたい訳ではない それでも俺の口は言葉を発するのを辞められなかった 「そのままで良いのか」 「で、でも、、、」 きっと俺同様に選択肢の無い世界で育ってきたんだろう それでも俺には性格も強さもふざけた男だが手助けしてくれる人が居た 「東京に、俺やお前のように呪いが視えてその呪いと向き合う方法を教えてくれる学校がある」 「呪い?」 「さっきの化け物の事だ。あれは呪い。人の感情から生まれた呪いが更に人の負の感情を吸って力を持つ。それを俺達は呪霊と呼んで祓い、視えない人達に被害が及ばないようにしている。そうやって呪いを祓う人間の事を呪術師と呼んでいる」 「、、、、」 非術師に囲まれて生きてきたなら御伽話でも聞かされている気分だろう 今までも不自由ながらも生きてこれたなら 知らぬ世界に足を踏み入れる必要は無い だがこのままだと見ず知らずの俺を 悪い人じゃなさそうだからと助け、治したこの善人な少女は クソみたいな不平等の中で押し殺されながら生きて行くはめになる 人の尊厳に足を踏み入れる卑怯な人間に利用されながら、、、 だったらここよりも平等に扱われる場所に救い出したい 「その中でも、お前みたいに他人の怪我を治せる反転術式を使える人間は多くない、というか稀少だ。俺も来年からその学校に通うがそこでは視えないふりも力が使えないふりもしなくて良い。そしてその力できっと多くの人間が救われる」 「、、、東京にあるんですか?」 「あぁ、呪術高専は表向きは宗教系の学校として存在する高校だ。だが全寮制だからお前の親から許可が出れば、になるが、、、」 「私、家族が居なくて、でもお金も無いのでその学校に通えるかどうか、、、」 不安そうにそう語る彼女に胸が抉られそうになる 俺と違って姉弟も居らず 察するに亡くなったという祖母に育てられたのだろう 彼女は本当に孤独だったはずだ [ ← | → ] |