依依恋恋 | ナノ




色々考えていたら眠れなくて


高専内にある自動販売機の近くのベンチに腰掛け雲でぼんやりした月を見上げる




このまま虎杖君が宿儺の指を飲み込み続けたら


いつか体が乗っ取られてしまうかもしれない


宿儺の言う通り私が宿儺の呪力だけ上手く奪い取れたら


それは阻止できるのかもしれない


でもそんな事を宿儺が簡単に許す訳が無い


また虎杖君が殺されてしまうかもしれないし


私だけならまだしも


野薔薇ちゃんや伏黒君、先輩達を殺そうとするかもしれない


そんな最悪な想像ばかりしてしまって怖い


やっと一歩前に進めたのに


簡単には越えられない壁がすぐに現れる



「宮内?」



ぼーっとしているといつの間にか伏黒君が近くに立っていた


自動販売機の明かりで照らされた彼の顔は驚いている


時間が時間なだけに、ここに人が居るとは思わなかったのかも知れない


数時間前に分かれた時の事を思い出して


申し訳無い気持ちが蘇ってきた



「伏黒君、こんばんは」



自分でも元気ない声が出てしまったと思う


隣に座った伏黒君に顔を覗かれたが


目元が赤くなっていた事を思い出してすぐに俯く



「、、、また泣いたのか?」


「う、うん」



伏黒君はきっと私が虎杖君が亡くなった事で泣いたと思っているだろう



「、、、ちょっといいか?」


「うん?」



聞き返したのを返事と捉えたのか


隣に座ったまま伏黒君に抱きしめられた



「、、、安心するって言ってただろ?」


「うん」



いつか野薔薇ちゃんに話した事を覚えてくれていたらしい


せっかくの優しさを無碍にしてしまったのに


伏黒君はまた優しく接してくれるんだ





伏黒君と自分の体の間で行き場を失った手には


少し早い心音と温かさが伝わってきて心地良い



「、、、冷えてるな」


「う、ん、、、」


「宮内?」



伏黒君の声が遠くに聞こえる







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