依依恋恋 | ナノ



「僕はさ、性格悪いんだよね」



硝子さんが虎杖君の解剖をする為に手術着に着替えに行っている間
硝子さんに渡されたリスト通り器具を用意しながら先生と伊地知さんの会話を聞く



「知ってます」


「伊地知後でマジビンタ」


「マ、、、マジビンタ?」


「教師なんて柄じゃない。そんな僕がなんで高専で教鞭をとっているか、、、聞いて」


「な、なんでですか、、、?」


「夢があるんだ」


「夢、、、ですか」


「そっ。悠仁のことでもわかる通り上層部は呪術界の魔窟。保身馬鹿、世襲馬鹿、高慢馬鹿、ただの馬鹿、腐ったミカンのバーゲンセール」


「「、、、、」」



今のは聞いて良かったんだろうかと思いながら


伊地知さんと黙って先生の話を聞く



「そんなクソ呪術界をリセットする。上を皆殺しにするのは簡単だ、でもそれじゃ首がすげ替わるだけで変革は起きない。そんなやり方じゃ誰も付いて来ないしね。だから僕は教育を選んだ」



解剖の為の器具を準備し終えて立って2人の話を聞いていると
先生が口角を上げて微笑みながら隣に座るように指でトントンと指される



「強く聡い仲間を育てることをね。そんなわけで自分の任務を生徒に投げることもある」


「、、、、」



愛のムチ〜と言いながら隣に座った私の頭に再び触れる先生


そういえば虎杖君に初めて会った時も伏黒君と共に先生から任務を指示されたなと思い出す



「皆優秀だよ。特に三年秤、二年乙骨。彼らは僕に並ぶ術師になる」



私を撫でていた手を自分の両膝の上でギュッと握る先生を見て


きっと虎杖君の事もそう思っていたんだろうと
目元は見えずとも悔しそうに感じた


先生は最強な分、今回の虎杖君に限らず見送る事が多いだろう


もしかしたら先生も学生時代に級友を失っているかもしれない



「、、、先生、ずっと最強で居るの、辛くないですか?」



きっと沢山の人を護る力が先生にはある


でもそれは手の届く範囲の話だ


自分が居ない場所の人はどう頑張っても助けられないし護れない


そして最強であるが故の苦しみもきっと他にも沢山あると思う


先生はずっとその中を1人で生きているんだろうかと思うと


いつも明るく、私達の為を考えてくれているのがどれだけ凄いことなのか


先生は強いから凄いんじゃない、きっと先生だから強いんだ


先生じゃなかったらきっと挫けてる


先生もなりたくて最強になったわけではないのだから



「ハハッ、参ったな、、、俺もまだまだ男なんだな」


「えっ?」



ポカンと口を開いて固まってると思ったら


いつも僕と言ってる先生が小さな声で俺と言ったように聞こえた



「恋って抑えられるもんじゃないんだね」


「こ、恋?」


「ちょっと君達。もう始めるけど」



先生が私に顔を近づけて突然恋について話し始めたと思ったら


手術着とマスクを着けた硝子さんが戻ってきた



「そこで見てるつもりか?」


「「「 !? 」」」




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