依依恋恋 | ナノ




私の願いも虚しく


倒れてる人全員を確認するも誰も生きてはいなかった


亡くなり命も呪力も失った人への反転術式は跳ね返されてしまい


元の姿にしてあげる事も出来なかった



「反転術式しようとした?」


「 !! 」



突然聞こえた声に顔を上げると


建物の入口から誰かが現れた


ツギハギ顔の人型の、、、



「呪霊と違ってニンゲンは難しいんでしょ?」


「っ、」


「にしても君本当に呪術師?弱そうだし可愛い見た目してるね〜どんな形に変えようかなぁ」



倒れていた人を膝を付いて見ていたので


呪霊と思しきモノは酷く歪んだ笑顔で近寄って来ているのに


立ち上がれない


手を伸ばされたので咄嗟に全身へ呪力を流すも身体は動かず逃げられない


ピトっと音がしそうなくらいゆっくりした動作で


私のおでこに手を当てられた



「、、、へぇ。あの七三術師を護ったのも君の呪力かな?」


「あっ」



おでこに触れていた手がそのまま頬を伝い


顎を通って心臓の上辺りに置かれる



「君の形は変えられないのか、、、気に入った!今ちょっと立て込んでるからまた会った時に話そうね!」



余裕があるような足取りでツギハギの呪霊は立ち去っていく


遠くで大きな音が聞こえてハッとする



「っはぁっ、ゲホッゲホッ、はっ」



いつからか息を出来ていなかったみたいで


上手く呼吸ができず咳き込み膝立ちしている事も出来ずその場に倒れこんでしまう



「はっ、はっ、っ、はっ」


「マリン!!」



苦しくて生理的に出てきた涙で視界がボヤける中


アイマスクをつけていない五条先生が近づいてくるのが見える



「せんっ、せ、っ、はっ」


「マリン、マリン、もう大丈夫だよ」



抱き上げてくれた五条先生の顔が近づいてくる


息がうまく吸えなくて開いたままの私の口に


柔らかい感触と共にゆっくりと息が吹き込まれる



「ん、んっ、、、は、、、」


「っ、無事で良かった、、、1人でよく頑張ったね」



そう言って私を抱えたまま立ち上がる五条先生


クリアになった視界で広がるその表情は酷く優しくて


酸素が脳に回り眠くないのに瞼が重くなってくる



「うん、僕が居るから大丈夫だよ」



そう微笑む先生の顔を見ながら両目を閉じる


涙が溢れるのと、柔らかい何かが瞼に触れるのを感じながら


私は意識を手放した






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