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「ほら、これを飲んで下さい」


「、、、あいつの面倒見なくていいの?」


「おい聞こえてるぞクソガキ」



紫がかった黒い影のような男がゴトリとバーカウンターにグラスを置く


中には見慣れた色のスムージー


食欲というモノが全く無い私でも不思議とこれは残さず飲み干せる



「先生に止められなければこんなガキいつでも殺すのに」



こちらを睨みながらボリボリと皮膚をかいているのが死柄木弔


こいつの世話を見ながら影のような男、黒霧は私の事も気にかけてくれている



「彼女の個性にはだいぶ支えられていますからね」


「、、、グロいもん撒き散らして殺すガキが」



何故か恨めしそうに睨み続けられる


私の個性は手から出るマイクロ波を当てて対象を破裂させる


電子レンジの原理と同じだ


死柄木の言葉を無視して黒霧に貰ったスムージーを飲む



「本当は固形物を食べて頂きたいんですけどね。無理に食べさせたくは無いのでせめてもの栄養補給飲料です」


「これは美味しい」


「お口に合って良かったです」



まるで雲にでも触れるように優しく頭を撫でられ


ぼーっと黒霧を見上げる


食欲どころか私には何故か記憶が無い


だが不思議な事に物を食べなくても身体は痩せ細るものの


死にはしないらしい


それでも痩せ細る身体を気にかけてか


死柄木弔の世話係というこの黒霧が定期的にスムージーをくれるのだ


ヴィランになった理由もここに居る理由もよく覚えてない


でもこのスムージーが美味しい事はいつだってよく覚えてる


そしてどこを向いているかあまりわからないけど


じっと飲み終わるまで見ててくれる黒霧


これの為なら死柄木からの嫌味やあまり気乗りしない仕事も頑張れる


だが表情も良くわからない黒霧の優しさを


ある日突然失ってしまった





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