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「もう決着ついたかな」

「いぎぎぎぎ」

「うぐぐぐぐ」


 お互いの頬を引っ張りあっていがみ合うルフィとウタちゃん。
 1度ウタちゃんとお昼ご飯を食べに帰り、またここに戻ってきた。またマキノさんの酒場に着くなりルフィと勝負し始める。ジャンケン、かけっこ、早食い等飽きずにずっと勝負している。

 マキノさんも仕事に戻り、シャンクスさんは片肘を着いて微笑ましそうに2人を見ていた。


「私の勝ちー!」

「まだだ!」

「出た!負け惜しみィ」

「こんにゃろー!まだ負けてねェもん!!」


 ウタちゃんもルフィも負けず嫌いで体力が尽きるまで何かしら勝負をしている。私はシャンクスさんの横に座り2人の勝負の決着を見守っていた。

 私よりも14歳も年上のシャンクスさんは更に年上の船員や大勢の船員をまとめて航海しているらしいけど、投げ出したいと思ったことは無いのかな。左目のところには傷があって痛そうだし、下手したら目が見えなくなってたかもしれないのに。

 ウタちゃんとルフィから目を外し、お酒を飲むシャンクスさんをちらっと見る。そんな私に気づいたのかどうしたと笑顔を向けてくる。

......髭がぼーぼーだ。


「おれはナナ姉ちゃんとふーふになるんだ!だよな!ナナ姉ちゃん!」

「ナナ!わたしと結婚してお嫁さんになるよね!」

「えぇ......」


 突然のよくある「お母さんと結婚する!」発言にウタちゃんとルフィの方を振り向いた瞬間、爆発したような笑い声が響く。驚いて椅子から飛び上がり辺りを見回すと、酒場内はシャンクスさん率いる赤髪海賊団の船員たちで埋まっていた。

 恥ずかしくなってきた。顔が熱い。真っ赤になった顔を見られまいと私は両手で隠した。もう暫くは顔を見せられない。私の背後からは「嬢ちゃんどっちを選ぶんだ」「モテモテだなァ」「ついにナナも一緒に船に乗る日が来たか」等口々に冷やかしてくる。

 横からキラキラとした目で見てくるウタちゃん達の反対でカウンターに突っ伏して震えていた麦わら帽子が、突然腕を肩に回してきた。


「で、どっちを選ぶんだ?」

「あ、あのシャンクスさん......?」

「ナナはわたしとずっとずーーーーっと一緒にいるもんね!」

「ナナ姉ちゃんはおれが守るし一緒に冒険するんだ!」


 座っている私の膝に乗ってきたウタちゃんはギュッと両手両足を使って私に抱きしめる。悔しげな顔をしたルフィは負けるものかと私の腕に抱きつく。2人とも可愛いなぁと現実逃避し始めた所にシャンクスさんは爆弾を落とした。


「ウタの嫁ならここには置いていけねェな」

「シャンクスさん!」


 今それを言ったら2人がヒートアップするに決まってる。シャンクスさんの言葉に案の定騒ぐちびっこ達。


「シャンクスもこう言ってるしわたしと一緒に赤髪海賊団で音楽家やろ!」

「ずりぃぞナナ姉ちゃん!おれだって船に乗りてェ!」

「誰も乗るとは言ってないかな」


 ルフィの論点がズレたところで今日はお開きになった。ウタちゃんもルフィもしばらく私に引っ付いたままだったが、それぞれの保護者に引き剥がされていた。




 翌朝。


「また会えるよね......」

「大丈夫、また帰ってきたら家においでよ」

「せ"ったい"い"く"」

「あーあ、うちの娘を泣かしたなァ」


 私をからかうシャンクスさんに抱えられて泣きじゃくるウタちゃんの頭を優しく撫でる。いつもこんな感じで泣いちゃうから寂しくなるけどちょっと可愛い。今回の航海もそこまで長くないみたいだから、少しの間離れるだけなんだけど、ここまで私を思って泣いてくれると嬉しくなってしまう。


「ナナ、い"つもの貸し"て」

「はいはい、ウタちゃんが元気で過ごせますように」


 木彫りの鳥と花で飾られた髪留めを自身の髪から外し、願いを込めてギュッと握りウタちゃんに渡す。初めて会った時からウタちゃんが航海に行くたびに続けている約束。
 赤髪海賊団を信頼して無いわけじゃないけど、怪我をせず病気にもならず、何事もなく元気に笑顔で帰って来れますようにと祈る。
 そして無事に帰ってきたらウタちゃんからそれを返してもらうという約束だ。

 ひっくひっくとしゃっくりをしながら差し出した髪留めを握りしめるウタちゃん。シャンクスさんに少し屈んでもらいウタちゃんの頭を1度だけギュッと抱きしめてから送り出す。


「行ってらっしゃーい!」


 後ろから駆け寄ってきたルフィを抱き上げて一緒に大きく手を振る。今回もまたルフィは船に乗れなかったが、ウタちゃんの航海の話を楽しみにしているし、私も楽しみだから元気な状態で帰ってきて欲しいなと思いながらルフィを抱きしめた。

 赤髪海賊団の船が出る。帆を広げ、この島とは反対方向へと。その様子をルフィと2人で船が見えなくなるまで眺めていた。

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