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本日は晴天なり。
心地いい風が洗いたての洗濯物をはためかせる。暑くもなく寒くもなく、ちょうど過ごしやすい気温だ。小さな港村、フーシャ村は今日ものんびりとした時間が流れている。
洗濯物を干し終わったナナはぐっと伸びをすると大きく息を吐いた。
「っはぁ......あっ!お昼ご飯の時間だ!」
ナナは洗濯物を入れていた籠を持ち、家の中へ入ろうとすると聞き馴染みのある女の子の声が後ろから聞こえてきた。
「ナナ!」
「ウタちゃん!久しぶりだねー」
「久しぶり!」
私に飛びついてきた赤と白のツートンカラーの髪に笑顔が素敵な少女はウタちゃんといい、赤髪海賊団の大頭の娘だ。実際には血は繋がっていないらしいが船員たちからも溺愛されている可愛い可愛い女の子。
ナナはウタを抱き抱えるとくるりと回る。ウタはきゃぁと楽しそうな声を上げてナナに強く抱きつく。ナナはウタの暖かな温もりに幸せを感じていた。
「そうだウタちゃん、私のお母さんがお昼ご飯作ってるんだけど一緒に食べよ!」
「うん!」
「シャンクスさんに言ってきなよ!」
「いいもん、シャンクスのことなんか。わたしはナナとずっと一緒にいたいの!」
頬を膨らまして私の腕に抱きついてくるウタちゃんはとても可愛い。でも親には一応報告しないとダメだからね。シャンクスさん心配しちゃう。
「えー......今シャンクスさんどこにいるの?」
「ルフィのところに行くって言ってた」
「じゃあ一緒に行こう!」
「ナナと行くならいいよ!」
ウタの返事を聞いたナナは家に戻り、玄関の扉を大きな音を立てて開く。入ってすぐのところまで鍋の煮えるくつくつという音とシチューの香りが漂ってきている。靴についてある土を軽く払いキッチンへと駆ける。
「お母さん!ウタちゃん来たからちょっと出かけてくる!あとウタちゃんも一緒に家でご飯食べる!」
「はいはい。作っとくから行っといで」
「ナナママ!こんにちは!」
「こんにちは。気をつけて行ってらっしゃい」
「「はーい!」」
大きな声で返事をする2人にナナの母は苦笑する。そしてナナはウタに手を取られ、家を飛び出していった。
私の家は村の中心部からは少し離れてはいるけどそこまで遠くないから、ウタちゃんと歌いながらルフィとシャンクスがいるであろう場所へ行くことにした。
きっとシャンクスさんはまたルフィに冒険の話をねだられているんだろうなぁ。
しばらくウタちゃんと一緒に繋いだ手を前後に振りながら歩いていると『PARTYS BAR』という看板が見えてきた。中からは楽しそうな声が沢山聞こえてくる。
「お邪魔しまーす」
「ナナ姉ちゃん!」
「ルフィ!やっぱりここにいた!」
中に入ると『PARTYS BAR』の店主であるマキノさんとルフィ、そして探していたシャンクスさんがカウンター席に座っていた。ウタちゃんはルフィの姿を見ると私の手を繋いだまま駆け寄っていく。
「ナナ、元気にしてたか?」
「お久しぶりです、シャンクスさん。風邪ひとつ引かずに元気にしてました!」
「ははは、それは何よりだ」
店内でも麦わら帽子を被っているシャンクスさんに頭を撫でられる。もうそんな撫でられるような歳じゃないのにと思いつつも、いつもその暖かくて大きな手に甘えてしまう。
私の父親は名前もわからない海賊団の船員で、シャンクスさんとウタちゃん以上になかなか帰ってこない。年に数回手紙とプレゼントが届いたりはするが、どこで何をしているかは分からない。だからこそ父親のような大きな手を持つシャンクスさんが私は大好きだった。
ルフィとは歳が近いためよく遊んだり、家畜の世話とかを手伝ってもらったりしている。きっと弟がいたらこんな感じなんだろうなぁ。いつも太陽みたいな笑顔でやんちゃで可愛い。
「ルフィもシャンクスも!ナナはわたしのなのー!!!」
「なんだとー!ナナ姉ちゃんはおれの姉ちゃんだ!」
「違う!ナナはわたしと一緒に船に乗るし私と遊ぶの!」
「ナナ姉ちゃんはおれと一緒に海賊になって船に乗るんだ!」
「違うもん違うもん!......こうなったら」
「「勝負だ!!」」
「あ!ちょっと!」
ウタちゃんとルフィに両側から腕を引っ張られる。助けを求めるように大人たちを見れば、ナナは人気者だなと口角を上げるシャンクスさんとあらあらと口元を押えて笑うマキノさん。2人とも助けてはくれなさそうだ。
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