マルコは寝起きが悪い。眠りからなんとか脱しても、ずいぶんとその余韻を引きずっており、眠そうな不機嫌そうな表情で、挨拶や会話をする。けれどやはりどこかぼんやりとしていて、常の彼らしくない。それが子供のようにも見えて面白いので、俺はそんなマルコを見るのがすきなのだけれど、隊員達にはどうにも恐ろしく映るらしく、挨拶をするのにも勇気がいるんだとか。
それは隊員達が少しばかり可哀相に思えて、しっかり目を覚まさせようと、俺は朝、自室の隣であるマルコの部屋を訪れた。

「おーいマルコー、起きろよ」

何度か揺すれば、マルコは眩しそうに、億劫そうに瞼を持ち上げた。その奥に覗いた瞳は、半分以上眠りを映しており、焦点が合わないのか、視線をさ迷わせている。やっと視線が合った、と思えば、ベッドの傍らに立つ俺を、マルコは布団に引きずりこんだ。俺共々夢の世界へ戻るつもりなのだ。それでは困る、起こしにきた意味が無い。

「おい……やめろマルコ、起きろって」

人肌のそれから抜け出そうとすれば、腰を引き寄せられ、眠れないとぐずる子供にするように、温かな手の平で剥き出しの背中を撫でられた。導かれるようにやってくる眠気を振り払おうとしても、誇りを刻んだ胸に頭を抱え込まれてしまって、身動きが取れない。俺は諦めを含んだため息をついた。それが胸に当たり擽ったかったのか、いい子にしろ、とでも言うように、マルコは俺の額に優しいばかりの口づけを落とす。柔らかなそれが離れる際、湿り気を含んだ、ちゅ、と言う音がした。それを耳にした途端、なんだか無性に気恥ずかしさが込み上げ、熱を持ち出す顔を彼の筋肉質な胸に押し付けた。
考えを改めることにしよう。こんなことをする人物は、眠くて不機嫌そうにしていても決して子供のようには見えないし、やっぱり俺にも寝起きのマルコはこわい。だって俺はこの腕に逆らえたことが、結果として一度もないのだから。

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