浅い眠りの淵で、隣の人物が起き上がる気配がした。ああ、もう起きてしまうのか。少し残念に思い、寝起き特有の重たい身体をどうにか動かして引き止めようと考えた。けれど隣の温度が消える事はなく、むしろ温かさが増した気がする。どうしたのだろうと思っていると、潜めた優しい声がした。 「ちゃんと掛けねぇと風邪ひくぞ、馬鹿」 俺今寝てるんでひとりごとはよそでやれ、とか、馬鹿とはなんだ死ね土方コノヤローとか、言いたいことは色々あったけれど、隣で再び寝に入る気配がしたので全てを飲み込んだ。 俺の知らないところでなら優しい声出せるなんて、アンタ本当に馬鹿ですねぃ。 あーあ自然と上がる口角なんて知らねぇ。俺はまだ夢の途中。 |