寒い寒い夜だ。
「先生はちゃんと夕飯を食べただろうか」
「あの人もご飯作るの?」
「もちろん」
床に肘をついて手のひらで頭を支えた俺を見上げながら、枕に頭を乗せてこっちを向くなまえ。
「ちょっと疲れてるね」
「そうか?」
「顔に出てるよ。無理しすぎなのよ」
サイボーグの顔から疲労が感じられるわけがないなんて言ったって、恐らく彼女には意味がないのだ。彼女がそういうのならきっとそうなんだろう。もぞもぞとしながらすり寄ってきた身体は俺が腰を抱いていた腕の中にすっぽりと納まってしまった。
「やだ、腕どかさないで」
「重いだろう」
「いいの」
俺の左腕の殆どの重量が乗っているにもかかわらず、それを無理に戻させたなまえは嬉しそうだ。俺は彼女のそういうところが好きだった。
「ん、」
うとうとし始めていた彼女をぎゅっと抱きキスをした。微睡みから戻ってきた彼女は服の中に入ってきた無機質な硬い手に驚いているようだ。
「ジェ、ジェノスくん?」
「おまえが抱きたい」
「え、あ、えっと、あ、はい」
照れた彼女を抱きしめて、その夜はずっと布団の中で離さなかった。どうしてか、どうしても離したくなかったのだ。
.