地球人は愛情表現として口と口を触れ合わせるのだという。
「なんだ、おまえが言っていたことをしただけだろう」
「…わたし、キスは愛情表現だって言わなかった?」
「?そう聞いたが」
いつものぼーっとした顔が眉を潜めて怪訝そうに俺を見つめている。
「わたしのこと好きなの?」
「だから、そういうつもりでしたんだろう」
なぜこんなに物分かりがわるいのだ。やはり地球人は頭が悪い。この俺がこんな地球人に、それも小娘に、文化に合わせて愛を伝えてやってるというのに。
「熱があるんじゃないの」
「馬鹿にしてるのか」
「馬鹿にしてないよ、疑ってるの」
なめ腐った女だ。
「…キスとやらを、もう一度だけしてやる。それで信じるか?」
ぽかんと口を開けるなまえの顎を捉えてゆっくりと触れ合わせる。なまえは目を閉じていた。そういうものなのだろうか。
「…本当に好きなの?」
「ああ」
「ずっと好きでいてくれる?」
「さぁな。お前が死んだらわからない。地球人は寿命が短いんだろう」
「……あはは」
笑ったなまえは腕を伸ばして抱きついてきた。初めて純粋な笑顔を見た気がする。そういえば、抱きつくのも愛情表現だと言っていたな。
「ボロスはさみしがりだもんね。いいよ、一緒にいても」
「なめてるのか地球人が」
「なめてないよ。大好き」
.