何十年ぶりかの大雪で電車が止まって、最寄りの駅についたのは日付が変わる少し前だった。それでも帰れただけラッキーだ。
「あ」
駅前の自販機の前、街灯が白く照らすいつも通る道に、肩と頭に雪を積もらせて彼は待っていた。
「…ソニックくん」
「遅い」
鋭い目でわたしを見つめる彼は不機嫌そうだった。わたしの家の鍵は持っているはずだ。無くたって彼ならどうにかして入ってしまうだろう。わざわざ駅まで来て待ってくれていたのか。
「わっ、なに」
歩み寄ってきた彼はわたしの頬に手を伸ばしてぴたりと触れた。わたしの頬も彼の手のひらも冷たく冷え切っている。
「ごめんね、寒かったでしょ」
「俺は忍だ。寒さ暑さは耐えられるよう鍛えている」
冷たい唇は冷たい唇へ触れる。温かい舌が入り込んできて彼お得意のねっとりとした器用な、今日は少しだけ乱暴に思えるキスをされた。そう言えば雪の中でキスだなんてロマンチックだ。
「ねぇ、怒らないで」
両手を強く握って彼の首に額をくっつけるようにすり寄った。寒かったし疲れたし、このくらい甘えさせてほしい。
「お前が遅いことに怒っているんじゃない」
「違うの?」
「…こんな時間になっても俺の迎えを呼ばないことに怒ってる」
ああ、心配してくれていたのだ。遅くなるからご飯一緒に食べられないってことを伝えただけだったから。口元が緩んじゃう。
「なまえ、次は呼べよ」
普通にソニックくんから迎え行くって連絡してくれればいいと思うけど、この人何故かそういうところ恥ずかしがりっていうか意地っ張りっていうか。年上のくせにね。
「ごめんね、今日は泊まっていって」
「ふん」
歩きにくい雪道の中、傘もささず手を繋いで二人で帰った。何度も転びかけるわたしをソニックくんは笑いながら引っ張ってくれた。
.
東京は雪で大混乱でした。