一撃 | ナノ





美容院に行った帰り道だった。

「む、お前はサイタマの」

ゴーストタウンの壊れた信号機の上に彼の姿を見つけた筈なのに、気づいたら目の前にいた。この忍者のような格好をした人はお兄ちゃんの命を狙っていつも返り討ちに合う変な人。なんだっけ…確か音速の…パニック?みたいな名前だった気がする。

「サイタマは家にいるのか」

「えっと、今はたぶんパトロールですかね」

「そうか」

少し身構えていたけど、なんだかいつものハイテンションじゃなくて拍子抜けした。この人実は、闘いとかお兄ちゃんが絡まなければ割りと普通の人なのかもしれない。

「お前、髪を短くしたんだな」

「あ、はい…気分変えたくて」

スッと伸びて来た黒い装飾に包まれた手に驚いて体が揺れた。思いの外大きな手はわたしの髪にさらりと指を通す。

「俺は長い方が好きだったがな」

にやっと笑われて自分の顔が熱を帯びて行くのがわかった。なんて、なんてなんて恥ずかしい奴なんだ。普通の人なんかじゃなかった。
音速のパニックさんはまた気がついたらいなくなっていた。顔がまだ熱い。髪に触れられた感触もはっきり残っていた。思い出すだけで恥ずかしい人、なんだよもう。トキメキじゃなくてただただ恥ずかしい。あの人苦手だ。








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