Make secret


筋張った、それでいて女性のようにすべらかな指が自分の中を探る時はいつも全身が震えてしまう。
恥ずかしいのに、それすら気持ちよく思える瞬間が好きだった。もっと奥までを暴いてほしい、なんて。とても口にできそうにない願望も、恋人にはすべて知られている。

「あ、あっ、ぁあ」
「す、ご」

濡れた指が後孔そ探るたびに卑猥な水音が立つ。耳を塞いでしまいたいが、もう体が自由に動かない。

「い、ぁあ、ひ、あっ」
「中、すっごく熱い……」

言わなくていいと首を振る。
けれど、臨也は小さく笑って胸をいじりながら、さらに後孔に挿し入れた指を増やした。

「ん、ンッ! ……や、あぁっ、あッ」

まるで生き物のように自分の中を這う指がいとしかった。それを表現できる言葉を知らないけれど、ただ抑えきれない喘ぎ声が口からはとめどなく零れ落ちる。

「ン、っあ……ひぁあああッ」

内壁をこすられるたび、奥を強く押されるたびに涙が溢れる。

「気持ちいいの、どこ?」
「ひ、あ、ぁあっ」

かすれた声が耳朶を打つ。それすらも快感に変わってしまう。

「言えない?」
「……っ」

ろくに言葉も紡げないせいもあったが、気持ちのいい箇所なんて、そんなものは全身のあらゆるところで。どこがいいかなんて答えられるわけがない。
ゆるく首を振ってわからないと告げると、優しく唇を吸われる。

「いいよ、シズちゃんのことはなんでもわかるから……言葉にしなくても」

穏やかで優しい声音とは裏腹に、指が深く中にもぐり込む。

「あ、あ、ぁあアッ!」

顎がそって後頭部をシーツにこすりつけた。

「や、い、いざ」
「うん?」

激しい指の動きにどうすることもできずに翻弄される。
やめてほしいのか、もっと、と言いたいのか。もう自分でもわからなかった。

「あ、ぁあああっ」

優しい手つきであるのに、どこか乱暴で性急な指の動きに痙攣するように下肢が跳ねた。

「く……ひ、っあ、あっ、ア」
「ごめ、もう、無理」
「ふ……く、う、あ、ぁあっ!」

苦しげな声に目を開けると、臨也は余裕のない表情で自分を見つめていた。その目の奥に垣間見える熱に、息を呑んだ。

「挿れて、いい?」
「あ、や、あ、ぁあっ」

何を、なんて馬鹿なことを考えた。相当熱に浮かされているらしい。

「駄目?」
「い、あ……ヒ、んっ」

この状況で返事など必要ないだろうと思うのに、臨也は何度も訊ねてくる。
こちらを気遣って、という意味も多少はあるだろうが、意地が悪い。きっと、こうやって必死になる自分を見ることが好きなのだ。

「あ、ぁっ、あ、ア!」

涙を零しながら必死に声を絞り出した。

「は、早く……っ」

聞かなくていいから。嫌だと言っても聞かなくていいから。

「い、いれ、挿れろ、よぉ」
「……っ」

彼の腰に足を絡める。きつくすり寄せると、臨也の体が震えるのがわかった。

「も、どっちが……」
「あ、あっ……ぁああっ」

指が抜かれていく。中を埋めるものがなくなった後孔が切なげに収縮した。

「シズちゃんばっかりが、とか、次にふざけたこと言ったら、許さないからね」
「ひ、ぁ、ああっ、ン、ん……っ」

ゆっくりと、彼の性器が押し当てられた。

「……ゆ」

その感触に恍惚としながら、臨也の言葉尻を掴む。

「許さない、って……?」
「たとえば、お仕置きとか、ね」

その綺麗な瞳が妖しく揺らめくのを見て、甘い期待が胸に湧く。

「……ゆ、許さなくて、いい」
「こら」
「……ッん」

わざとそんなことを言えば、彼は苦笑して腰を抱える手に力をこめた。
まるで誘い込むようにうねる自身の秘所に、恥ずかしさが湧き上がる。

「それに――」

少し間を置き、臨也は汗を滴らせながら、どこか不安げに微笑んだ。

「ちょっと、悲しいかな」
「あ……」

――信じてもらえないのは。

小さな囁きは切なげで、思わず胸が締めつけられた。
安直なことを言うのではなかったと、後悔が滲む。

「……やっぱり、やめる」

言わない。ちゃんと、言うことを聞くから。
悲しい顔はしてほしくない。
つたない言葉を並べると、臨也はまるでそれを知っていたように鮮やかに微笑み、

「……嬉しい」
「ん……っ」

とろけるような口づけをくれた。





熱い。
痛みや苦しさを感じるよりも先に思ったのはそれだった。

「あ、あ……あ、あぁあアッ」

深く、奥まった場所に彼の性器が押し入った。
息すら忘れて、その熱さに恍惚とした。
繋がった状態で見上げた彼の顔にはいつもの理知的な表情は隠れ、動物的な、どこか飢えた表情を浮かべている。
自分にとって、他に誰にも見せたくない、恋人の表情だ。

「い、ざや……っ」
「っ……なあに」

たまらず名前を呼んだ。
かすれた声が苦しげに応えた。「あのな」と、うっとりと彼の顔に見惚れながら言葉を探す。

「き、気持ちいい……」

知ってほしくてつい口にした。こんなにも気持ちがいいのだと、彼は知っているだろうか。

「お、おまえの、さわってる、とこ、全部」

繋がっている箇所も、彼の指や吐息がふれる箇所も。
すべて、まるで性感帯にでもなったように、心地がいい。

「あ、ぁああ……ひッ、ぁ」
「っ」

中で彼の性器が震え、自身もそこを締めつけてしまう。

「……俺も、だよ」

下肢を揺らせながらその快感に耐えていると、臨也の低くかすれた声が耳をくすぐった。

「俺も、気持ちいい」
「…………うん」

なぜだか快感とは違う涙が零れた。





「ひ、あ、ああっ、や、あぐ……っ」

ゆっくりとした抽挿が徐々に激しさを帯びてくると、体が面白いように跳ねた。
口からは嬌声と唾液が零れ落ち、力が入らない足は臨也の動きに合わせて揺れている。

「あ、あ、あ」
「イきたい?」

顔に張りついた前髪を唇で払われた。そして額に唇が落とされる。

「あ、んンッ」

容赦のない律動に目を瞑る。
するとそれを咎めるように舌が瞼の上を這った。

「ねえ、俺を、見て……」
「あ、や……っあ、ぁああああっ」

後孔が立てる淫靡な水音と、肉と肉のぶつかる乾いた音が静かな部屋に響き渡る。
中まで彼のもので埋められて、もう全身が自分のものではないような気がした。

「ね、イきたい?」
「ひあ、あ、ぁああッ」

問いかけに必死になって頷いた。この快楽の波から掬い上げてほしい。もはや羞恥は片隅に追いやられて、思い出すことさえしなかった。

「い、いきた……っ」
「ゆっくり、動く、から」

腰の動きがゆるくなり、代わりに味わうかのように中をくまなく突き上げた。

「感じる箇所を、探してごらん」
「ん、ン……あ、ぁあっ」

そう言われてもどうすればいいのかなんてわかるはずもなく、臨也の動きに合わせてみずから下肢を揺らせてみる。

「力を入れたり……っそう、上手だね」
「あ、うぁ、あ」

後孔に力を入れて彼のものを締めつけた。まるで呑み込むような粘膜の動きに、快感が幾重にも重なって体を覆う。
自分も感じて、臨也も感じている。

「……っ」

それがわかるとたまらない気持ちになり、さらに腰を動かした。

「いざ、いざや、臨也」
「シ、ズちゃん」

名前を呼びながら下肢を押しつける。中でこすれる彼の性器を締めつけた。

「あ、ひぁあっ、あああッ」

溢れる快感がもどかしい。もっと、もっと。
そう思っても体は思うように動かない。じれったさに唇を噛む。自分の不器用さに泣きたくなっていると――。

「っあ!」
「ごめ、ん」

強い力で腰を掴まれた。
臀部に彼の爪が喰い込む。その痛みはもう快楽でしかない。

「ヒ……ッあ、あああっ」
「っ」

叩きつけるような荒々しい挿入だった。
何もかもを攫われるような快感の波は、もはや暴力的だ。

「ン、あ、ぁあああっ……ひ、ンッ、あ、あああ!」

苦しいのか痛いのか、それとも気持ちがいいのか。その境界すら曖昧になって、ただ臨也の激しい動きに身を任せていた。
このまま死んでしまいそうな心地にまでなって、そんな甘美な夢ともつかない現実に酔って、恋人に縋りつく。

「あ、ぁあ、あっ」

人形のように頼りない体に呆れながら、揺れる自分のつま先が目に入った。

「あっ、ん、あぁあっ……い、ざ……」

嗚咽混じりの嬌声を上げながら、彼を呼んだ。
たすけて、と無意識に言ったような気もする。

「……っいい、よ……イきな」
「や、ぁ……っあああ、ァアッ」

囁きを聞いた瞬間、体の奥底から湧き上がる感覚にむせび泣いて、すべらかな恋人の肌に爪を立てた。

「あ、ああああっ」
「――ッ」

何かが弾けるような感覚。中で熱いものが溢れる感覚。
すべてが混ざり合い、ゆるやかに意識は霞んでいく。

「……シズちゃん」

恋人の甘い声を聞いて、安堵を覚えながら目を閉じた。






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