WORLD4(さよなら世界)
2013/05/21 02:05
静雄はゆっくりと臨也に詰め寄った。
息のふれる距離まで顔を近づける。
鬼のような形相で睨みつけ、目をそらさない。
「…………」
「…………」
他の人間ならそれだけで怯え、静雄の前から逃げていく。
けれど相手は臨也だ。
彼は楽しげに微笑み、言った。
「もし明日」
彼の形のいい唇が動く。
滑らかな頬は夕日に赤く照らされ、艶を帯びていた。
臨也は言う。
「明日、世界が一変して、今までできなかったことができるようになったらどうするの?」
「…………」
(どうする? どうするだって? そんなの――)
苛立ちと僅かの混乱が静雄の胸中を占めていた。
臨也の言うことを理解できない、あるいは理解したくない。それはいつものことだった。
今だってそうだ。
わけのわからないことを。
そう、思うのに。
(……もし、もしも)
世界が終わるようなできごとがあるとしたら。
なんて。
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