WORLD3(さよなら世界)
2013/05/09 02:54
臨也はこちらを見つめながら言葉を紡ぐ。
「できないできない、できないから嫌」
歌うように彼は囁いた。
なめらかな声は耳に心地いい。
けれど、静雄にとってそれは心をざわつかせる声音だ。
みるみる自分の機嫌が悪くなっていく。
それでも臨也は喋ることをやめなかった。
「子供の言い分だよね。先なんて何一つ見えてない」
「……だったらなんだ」
たまらず、言い返した。
ふざけたことを。
先なんて、未来なんて。そんなものは今の自分にとって意味がない。
刹那的な時間さえコントロールできないというのにそんな先の話など、静雄にとっては現実味がなさすぎた。
自分たちは若い。
子供と大人の境界を危なげに歩いている。
先のことなんて考えられない、考えたくない。
何かに怯えるような、何かに焦るような。常にそんな危機感がつきまとっていた。
それは臨也も同じだろう、と静雄は知っている。
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