WORLD1(さよなら世界)
2013/05/05 23:23

十七歳。
多感な年頃の二人は毎日のように派手な喧嘩を繰り返し、毎日のように傷つけ合った。

今日もいつもと同じ、変わり映えのない放課後の屋上。
臨也と静雄はボロボロになった体を壁にもたれさせ、小休止をしている。

「…………」
「…………」

僅かな休戦の時間は酷く穏やかな空気が流れる。
それを無理に破らないということが、二人にとって暗黙の了解だった。

静雄は臨也のナイフで切り裂かれた服や肌に目を落とし、頭を壁に預けて空を見る。
荒かった呼吸はすでに整っていて、今はどちらかと言えば空腹を感じていた。
赤い夕焼け空をぼんやりと見つめていると、手を伸ばせば届く距離で隣り合って同じように壁にもたれていた臨也が身じろぐ気配がする。
顔を向けると彼は血や泥、それに汗で汚れた顔を乱暴に手の甲でぬぐっていた。

(……黙ってりゃ綺麗なのによ)

半眼で彼を見やりながら考える。
静雄にとって臨也は憎い敵以外の何ものでもないが、こうやって穏やかな空気を共有している時のみ、落ち着いて彼のことを考えられる。
普段はすぐ頭に血がのぼり、とても観察などできる余裕はない。

ふいに臨也がこちらを向く。
いつもよりも少し優しい表情で、けれど苛立つのは避けられない。これはもはや本能だ。
臨也のこととなると冷静でいられない。まるで運命のように。



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