迷惑電話13
2013/04/26 01:47

これはノロケというやつなのだろうと、ようやく新羅は思い至った。
新羅自身セルティのことであれば延々話していられる自信がある。
彼らもそれと同じで、浮かれた調子のまま会話が終わる気配がない。

『くそ! てめえこそ、どこの女とあんな……いや、男か? とにかくどんな人間と、あ、あんな……』

どうやら話は経験値の云々に移行したらしく静雄が悔しげに歯噛みしている。
臨也の性生活について新羅は知る由もないが、それでも静雄よりは経験のほどは上だろうと思っていた。
実際、そうだったのだろう。
臨也の過去のあれこれに想像を巡らせ悶える静雄に対し、臨也自身は心外だとばかりに反論する。

『ああ、違う、違うよ。あんなこと、したことない。全部妄想。そりゃ色々想像してシコったことはあるけどさぁ』
『綺麗な顔でシコるとか言うな』

(うん、僕もそれは思った。臨也ほんとに口調崩壊してるなぁ)

『涙目で睨まないでよ。ほんと、誤解だから。俺のオカズって、もうずっと君だし』
『……俺だって、俺だってなぁ』

(そうだったのかー、僕知らなかったなぁ、そうかオカズ……そうなのか。お互いにシコり合ってたなら今日のこれは必然だね。なるべくしてなったってことかぁ、よかったよかった)

何がよかったのか、よくわからない。
わからないが二人が幸せならそれを喜んでやるのが友人というものだろう。
正直、心の底からどうでもよかったが、もういっそ彼らの幸せを自分の幸せと思わなければやっていられない状況である。
新羅は長い時を経て結ばれた二人を心の中で祝福した。

『ああ、目元、こすらないで。赤くなるよ。その顔はヤバい、駄目』
『……何が』
『興奮する。昨日の今日だしね』
『すればいいだろ。それとも何か? さっきの言葉は嘘か? 俺でオナってたっつーのはよぉ』
『まさか! 人の純愛を疑わないでほしいな』
『何が純愛だ。こっちはもうずっと、おまえばっかり……』
『知ってる』

「…………」

甘い囁きが徐々に艶を帯びてくる。
彼らがこちらの存在を覚えているのかも怪しい。
なんだか現実が遠い。
電話を手にしたまま新羅はうな垂れる。
そろそろ限界だ。
そう思い、重い口を開いた。



prev | next
memo top


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -