迷惑電話12
2013/04/20 16:52

なぜか脱童貞できなかったことを嘆き、臨也とのセックス――しかも抱かれた――その事実について一切の不満を言わない静雄。
彼らの論点がよくわからない。
それを言い出したら、昔からよくわからない二人だった。
よくわからない二人ということを、新羅はよくわかっていた。
だから長年、友人でいられるのだ。
あちらからすれば新羅も「よくわからない」部類に入るらしいのだが、今のこの瞬間では一番の常識人は自分だという自負がある。

(ああ、いっそ僕も常識捨てたい)

池袋と新宿の宿敵たちは仲睦まじく語り合っている。
拗ねた静雄に対し、臨也が機嫌を取っているようだった。

『脱処女も脱童貞も似たようなもんだよ。一線超えりゃ、大差ないって。そうだ、今度口でやったげる。女のアソコとは違うけど、感覚は似てるだろうし』
『あー、まあ、それなら……おまえ、口も相当器用だもんな』
『あれ、なんでそんなこと知ってんの?』
『縛ったとたん、器用に口で人の服をはいだのはどこのどいつだ』
『そうだっけ?』
『手が使えないくせに好き勝手しやがって……』

(口は器用だよ、臨也。ていうか静雄、昔からその口にやり込められてきたくせに今更何を……って、そういう口じゃないか、こりゃ失敬)

もはや自分の思考すらよくわからない。
勝手に脳内で合いの手を入れている。

『思い出してきた。そうだ、そんで、途中からはじれた君が色々頑張ったんだよね。俺、指示するだけだった』
『初心者に高度なこと求めんじゃねえよ、ほんと鬼畜だなおまえ』
『でもシズちゃんうまかったなぁ。どこで覚えたの? 殺すよ』
『おまえが! あれやこれやと命令したんだろうが! あんなこと初めてしたし言ったわ! このボケェ!』
『うわ、マジか。すごい感動する』

(あはははは)

笑うしかない。
声は出なかったが。



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