迷惑電話11
2013/04/16 03:00
(赤い縄……縛る……)
新羅は遠い目で宙を見つめる。
なるほど、二人が一線を越えたことは理解した。
あの二人は切っても切れない間柄だ。
ある意味この展開は必然だったのかもしれない。
ただ――。
(いや、だから、僕はどうすりゃいいの?)
というか、なぜそれを言った。
胸中で突っ込む。
聞いたのは自分だが、そもそもなぜ電話してきたのか。
きっかけがなければ新羅とて深入りしようなどとは思わなかった。
彼らが二人で睦み合うこと自体に問題があるとは言わない。
他所では問題が多々あるだろうが、少なくとも新羅にはない。
自分にとって最優先事項はセルティだ。
臨也と静雄は数少ない大事な友人だが、それこそ二人がやっただのやってないだの、そんなことはどうでもいい。
どうでもいいはずなのに、この衝撃というか、わけのわからない疲労感はなんだろう。
受話器越しに二人の会話を黙って聞く。
何かを口にする気力がなかった。
『緊縛とか童貞のくせにやるじゃん』
『もう童貞じゃ……って、あ! そうか、俺まだ童貞か……!』
「…………」
(今更気づいたんかい! っていうか、君らの役割分担そういうことね。あー、なるほどまさか臨也が抱いて静雄が抱かれるとは。…………なんで友人の性事情を詳しく知ることになっちゃったんだ僕は……)
『おいおい、今さら気づいたの? もう処女ではないけどねー』
『くそ……っ、セックスしたら色々卒業できるものとばかり……』
「…………」
(そこ?! 大事なのそこ?! もっと他に色々思うことはないの?!!)
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