迷惑電話6
2013/04/07 20:55

『……っるせえなぁ。さっきからなんだ、ギャンギャン。テンションたけぇよ、臨也ぁ』

スピーカーになった電話から聞こえてきたのは、不機嫌そうな男の低い声。
新羅にとって、それは初めて聞く声とは言いがたい。覚えがある。

(…………)

ただ、頭が認めようとしないため、その人物について考えることはしなかった。
どこか遠くに意識を向けていると、いつの間にかこちらをよそに、彼らは何やら会話の掛け合いを始めている。

『ふふ、浮かれてるのは認める。でも、君こそ人のことは言えないだろう? その凶悪な笑顔、なんとかしなよ。そんなに楽しい?』
『楽しいっつーか……あー、なんだ、まあ、悪くねえ』
『男前! かっこいい!』
『やめろよ、おまえこそいい男じゃねえか。髪うしろに撫でつけると、雰囲気変わんなぁ』
『あはは! 汗ですっかり濡れちゃった。君は目つきが悪いほうが色っぽいねぇ』
『そりゃ、おまえにだけだっつの』

(…………)

仲睦まじい――そんな言葉が浮かんで消える。
実際、彼らの上機嫌は物理的に距離のある自分にまで伝わってきていた。
声の色や調子、そこから滲むのは喜色以外の何ものでもない。

「…………」

わかっているのだ。
受話器を耳にあてている以上、どうしても声は聞こえてくる。
いっそ電話を切ってしまえ、と自分の中で囁く声があったが、妙な魔力で縛られたように体が動かない。
それは好奇心という、時として人を破滅させる危険な感情だと新羅は知っていた。



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