遠からずの未来6
2012/10/24 10:43
手際がいいのか悪いのか。とりあえず丁寧に作業することを心がけた。
自分が野菜を刻む音、臨也が殻をむく音。そのうちに彼はフライパンにオリーブオイルを流し、魚介を軽く炒める。
なんとも言えないいい香りが鼻をくすぐる。
嬉しくなって静雄は自然と微笑んでいたらしく、臨也に肘で小突かれる。
「……んだよ」
「なんかさぁ」
彼がふいに手をとめ、独り言のように小さく呟いた言葉を、静雄は危うく聞きのがすところだった。
手元から彼に顔を向ける。
すると、臨也はこちらを見上げ、楽しげに笑った。
「新婚の家庭ってこんな感じなのかな」
「…………」
新婚。
あまりに自然な様子で言うから、意味を理解するのに時間がかかった。
prev | next
memo top