嫌い、嫌い、大好き5
2013/07/13 06:07

「……その態度がムカつく」
「なんでもお見通し、って態度?」

かろうじて呟いた悪態を笑われる。
臨也は今度こそ体のふれる距離に座り直し、静雄の肩に手を置いた。
顔を覗き込まれ、思わず視線をそらす。
けれどすぐに相手を見返した。逃げていると思われるのは心外だ。

彼は相変わらずのんびりとした態度で、まるで問題などないと言わんばかりに微笑んでいる。
問題は大ありだ。しかしそれは静雄の問題であって、臨也にとっては些末なことにすぎない。
いつもそう。
わけのわからない問題をかかえるのが自分であることも、それを見透かされることも。

苦々しい思いで唇を噛んでいると、肩に置かれた臨也の手に力がこもった。

「何も俺が読心術に長けてるってわけじゃないよ」
「嘘つけ」
「いや、ほんと。そりゃ多少は人の心の動きを利用したり、読んだりもするけどさ。でも読めない相手や状況もある」
「…………」

からかう響きもなく事実のみを語っていると言うかのような、淡々としたその表情。
静雄の態度は徐々に不機嫌――というよりふてくされたものになってきた。当初の装いは鍍金が剥がれるようにボロボロと落ちていく。
そのことに気づきながらも抵抗をやめない。悪あがきと知りながら、舌打ちしたのちに獣のような声音で吐き出した。

「俺が単純だって言いてえのか」

普通の人間なら震えるような迫力だ。
しかし臨也には通じない。彼は笑ったまま肩に置いた手をさらに進め、静雄の耳朶を引っ張った。

「と、いうか」



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