飲みに行こうか2
2013/07/04 23:50
「で、何食べたい?」
「肉」
やって来た臨也を見とめ、煙草の火を消す。
携帯灰皿をポケットにしまい、彼の問いかけに端的に答えた。
「焼肉?」
「もうちょい洒落た雰囲気がいい」
「雰囲気重視とか君らしくないなぁ」
会話を交わしながら歩き出す。
機嫌よく喋る臨也に「ほっとけ」と小さく呟いて、彼の肩を軽く小突いた。
洒落た雰囲気など、不似合いなことは重々承知だ。けれど、そんな気分の日だってある。いつまでも学生というわけではないのだ。
そのあたりのことを視線で訴えると、臨也は慣れたように肩をすくめ、いくつかの候補をあげた。
フレンチ、イタリアン、中華、和食、創作料理。
どのみち臨也に連れて行かれる店にはずれはない。
「うまい酒とうまい肉があればなんでも」
「ふぅん……じゃ、和食でいい? おいしくて雰囲気よくて、あと個室」
個室、という点をやけに強調され、静雄は苦笑する。
「なんだよ、そんなに周りの目が気になるか?」
「気になるっていうか……周りの目を気にして行儀よくする必要がないって、結構いいもんだと思わない?」
その提案には同意した。
肩がこらないのはいいことだ。しかし、臨也の言葉には含みがあった。
どことなく艶めいた響きを感じていると、彼が指を絡めてくる。
(周りの目って、そっちの意味か)
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