透けて、落ちる。W ver. | ナノ
※兄神+高(原作)
・ドメスティックバイオレンスのお兄さん
・実際の登場無し
・情事後の神楽ちゃん=のーくろーず
上記の設定が苦手な方はバックをお願いします。
真っ白のシーツに壊れた人形のような少女が沈んでいる。
「おい、何見てんだヨ」
感情の篭らぬ青がぎろり、と傲慢に動いたが他の手足や顔は痛々しい傷を付けたまま、何一つ微動だにしなかった。
「生きてたのか、」
「勝手に殺すなヨ」
異様に赤い唇が高いソプラノで言葉を作る。見た目通り、まだまだ餓鬼の声だった。
「ひでぇ有様だな」
「うっさい、」
見た所、骨は折れていないようだが、白絹のような少女の肌には鬱血跡やら噛み跡やら、青痣やら切り傷やら、とにかく痛ましい状態だった。
「また、あの兄貴か?」
「だったら、何アルか?」
少女は自身の腕を持ち上げ、血液の滴る傷口を傲慢に舐め取ると赤黒い血の跡は消え、その下の塞がりかけた切り傷が覗き出る。
「別に、興味はねェな」
周囲に無関心なこの少女は、自身の見なりにすら関心がないのだろうか。何一つ身に付けず素肌を曝したまま、己の前に平然と横たわっている。
「盛んじゃねーゾ、晋助ぇ」
ケラケラと不敵に笑う少女を鼻であしらい、こちらも不敵に笑みを返す。
「畜生、女に不足はねェよ」
14、5の餓鬼に欲情するのはテメェの兄貴ぐれェだろ。しかも毎度の事ながら随分と、ドメスティックな愛し方をしてやがる。
「殺されるぞ、」
あの歪んだ男はきっと歯止めをかける事など考えもしないだろう。このまま行けば、本当にいつかこの少女は殺されるかもしれない。
「心配してるのカ?」
皮肉めいた笑みを浮かべながら少女は立ち上がる。薄いシーツを傷だらけの躯へ纏い、薄暗い部屋に一つだけある窓へと行くと、寄り掛かるように頭を冷えたガラスに押し付けた。桃色の髪が太陽の明かりを受けて透き通る。
「余計なお世話、ヨ」
物憂げにガラス越しの空を見上げれば、日の光を含んだ長い睫毛が静に煌めいた。
確かに、余計な事だ。
この少女は望んでこの檻の中にいる。他人が口出しするような事ではない。何たって、兄妹そろってイカれてやがるのだ。夜兎の特性だろうか、はたまた彼等だけの運命か。何にせよ、理解不能な事には変わりない。
「逃げねェのか?」
意味の無い問い掛けに、内心舌打ちをした。
「ふん、…‥オマエが手伝ってでもくれるのカ?」
薄ら笑いを浮かべる少女の眼差しは薄暗く重い。
「ほォ、逃げてェのか?」
逃げる気なんか、当の昔に無くしたのだと思っていたが、違ったのか。
「そう、ネ‥……、せめて、お日様の下に、行きたいヨ」
呟かれた言葉は無感情に零れ落ちる。
「こんなしみったれた明るさなんて、御免アル。
私は、眩しいぐらいの太陽が良い。憎くて憎くて、それでも焦がれる太陽の下で、笑って、死んで逝きたいのヨ」
窓から入る静かな日の光が少女を包む。緩やかに笑うその顔の、何て甘ったるい事か。
「きっとそれは、此処では出来ない事ネ」
この幼い夜兎の少女は、沈む暗夜の中に身を埋めながら、此処ではない何処かを、望み続けている。
「あの兄貴の隣は、血反吐の地獄だろ?お天道様なんざ、遥か彼方だなァ」
少女は笑った。風鈴のように軽い声が耳を摩る。
「ふふふ‥…、でもネ、晋助ぇ」
華やかに妖艶で、まるで幸福に浸るような、あどけない青が笑っている。
「私が死ぬ時は、神威も一緒アル。だからネ、二人で日なたぼっこでもしながら、この世から、おさらばするのヨ」
嗚呼、何て幸せそうに、イカれてやがるのか。あの兄貴なら、喜んでそうするだろう、迷いなど、微塵も無しに。
互いが互いを道連れにしながら、何方とも無く、破滅を選ぶ。いっそ清々しい程まで潔く、そして純然だ。
「良いダロ、晋助ぇ」
小首を傾げながら少女が問う。纏うシーツは光に透けて、細い肢体を包んでいた。
「悪くはねェな、」
満足げに細まる青と自信溢れる唇に、こちらも愉快にニヤり、と笑う。
「てめェの好きな枝垂れ桜、ひと枝折って手向けてやるよ」
あの世への旅路の土産には、なかなか洒落た餞だろ?
後書き、
退廃的に真っ直ぐな神楽ちゃんが大好きです。それに付き合う高杉と、当たり前のように受け入れる神威くんも大好きです。
この3人じゃないとだーくな話は難しい(--)
狂っていようが、いまいが、そんなもの、大した問題でもないし、どうでもいい。って吹っ切れないんですよねぇ。
古川、
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