TOA | ナノ


はじまりのうた

エンゲーブ周辺、タルタロスが漆黒の翼らしき3人組の馬車を発見した。一応、捕縛しなきゃならないから、任務中だけれど奴らを追った。

「そこ辻馬車よけなさい!
巻き込まれますよ!」

マイクを通じて、近くを走る辻馬車が避けていく。よかった、巻き込んじゃ大変だもんね。それにしてもタルタロス、やはりでかい。辻馬車が小さく見え…って、具合悪くなってきた。ジェイドに言って休ませてもらおうかな。

「あれ、アース、どうしたの?」
『アニス、いや、ちょっとね』
「あ、もしかして酔った?大丈夫?お水持ってきたげる」
『あら、ありが』
「これを知った大佐は、オバサンに呆れて若いアニスちゃんに…きゃわーんっ」

素直に礼を言おうとしたのが間違いだった。このクソガキ…じゃなくてこの小さいの…でもなくて、アニスは自分に正直だ。あれから数回言っているのに、訂正しない。私は"オバサン"じゃない。もしそうならジェイドだってオジサンじゃない!

「はい、ホントに辛そーだね、無理しちゃダメだよー?」
『ん、ありがと』

実は、というか私達がエンゲーブに向かう数時間前、敵国であり任務の目的であるキムラスカ・ランバルディア王国方面から、タタル渓谷に第七音素の反応があった。違法入国、だろう。その調査も兼ね、親書の到着が少し遅れていることもありで、タルタロスの走行はゆっくりだった。そこに、漆黒の翼、だ。

『アニスがくれた水で多少楽になったし…仕事してくるわ』
「りょーかーい、あ、大佐に私のこと言っといてねっ」
『…小娘がなに言ってるのよ』
「む、ガキ扱いしないでよ、オバサン!」
『馬鹿ねぇ、私がオバサンならジェイドはオジサンで、貴女はガキんちょよ』
「っ!!」

"覚えてやがれぇ!"なんてあの可愛い顔で、低い声で叫ばれた。ジェイドが聞いてれば良かったのに。

「ホマレ」
『、なに?』
「エンゲーブまで、あと30分もしない内に着きますから、下りる準備を」
『あぁ、漆黒の翼に逃げられたしね』
「エンゲーブのリンゴ、好きでしょう?」
『う、ん』

"ご馳走しますよ"と、ふわりと笑みを浮かべたジェイドに不覚にもときめいた。ああ、この人無駄に顔いいし声もいいから…!ぱ、と顔を反らせば先程の笑顔は何処へやら、ニヤニヤと意地の悪い笑みに変わった。

「随分と懐かれたようですねぇ」
『まあね、可愛い妹ができたみたい』
「あまり、深入りはしないように」
『、わかってるわよ』

視界に、エンゲーブの村が入る。すると私の部下…数人の第一師団の中の副団長、ライがこちらに向かってきた。乗り物嫌いな私に、水の入ったコップを渡してくれて、にっこりと笑い"エンゲーブです、おりましょう"と手を引かれた。(因みにライは男)

『じゃ、行くわよジェイド』
「了解しました、ホマレ中将」

他の、部下とかがいるときは私のことを階級つけて呼ぶジェイド。別に、先輩なんだから気にしなくてもいいのに。部下達に示しがつかないっていう理由はわかるけど、私は気にしないのに、な。

エンゲーブの村に着くと、一人の女性、顔なじみのローズさんが出迎えてくれた。"久しぶりだねぇ"と肩を叩かれて"ご無沙汰してます"と笑えば、忙しいみたいだけど、身体は気をつけるんだよ?と優しい笑みを向けられた。エンゲーブは、好きだ。村人みんな協力しあって、仲が良くて。私を、暖かく迎えてくれる。暖かくて、優しい人達なのだ。

「ホマレ中将、説明は」
『ジェイドに頼むわ、私は少し村を見てくる』
「わかりました。お気をつけて」

"ありがと"と礼を言い、村の市場、というか店が並ぶ場に歩いていく。その間、村の人達が次々に声をかけてくれて、それに私は笑顔で返した。
久々に食べたくなったエンゲーブの印が示されるリンゴを買おうと店まで歩く、すると"リンゴ泥棒!"と聞き捨てならない声。そこまで行けば、朱色の長い髪をガシガシとかき"違うっつーの!!"と反論する、男児。あの朱髪は…もしかして、

『どうしました』
「、アンタは…ホマレ中将さんじゃないですか!」
『争う声が聞こえたので来てみました。で、どうしました?』
「いや、コイツが金を払わずにリンゴを食っちまって!」
「だから、知らなかったんだよ!!」

朱色が叫ぶ。と、隣にいるロングヘアの少女が溜息をついた後、話し出した。

「彼は、世間に疎いんです。
本当に申し訳ありません」
「、まあ金を払って、くれりゃあいい」
『あぁ、じゃあ私が出すよ。その、彼が食べてしまった1個に加え、10個お願い』
「中将さんが言うなら、仕方ないな」

"ありがとう"と笑えば、パと顔を反らされた。え、ひどい。渡されたリンゴ、ガルドを払えば、毎度あり!と釣りを渡された。

「すみません、ありがとうございました」
『いいのいいの、世間知らずなのは頂けないけど…これで覚えたでしょう?』
「…おう、けど俺は!」
『ふふ、次から気をつければいいの。最初は誰だって分からないものよ』

"ね?"と言えば2人してきょとん、とした表情で。すると朱色はみるみる顔を赤く染めた。"ありがとよ"とそっけなくも嬉しそうな声色で言われ"どういたしまして"と笑顔を浮かべれば、今度は顔を思い切り反らされた。

『じゃあ私はこれで』
「あ、あの貴女は」
『ホマレよ、アースって呼んでちょうだい』

"じゃあね、"とローズさんの家に行こうと踵を返せば"おい!"と少年の声

「ありがとよ、アース!」
『どういたしまして、朱髪クン』

くすりと笑って、引きかえした。後ろで2人が話しているのが聞こえたけれど、2人とはこれから関わることになるであろう。私だって、一応は将軍の位をもらってるわけだし、今の2人が怪しいのは分かる。自分もそうだからか、彼らが第七譜術者だということもわかる。赤い髪の男児、きっと。


確信はないけれど


(きっと、彼は)



20110711

3話目。ほらな最初だけ沢山書くんだよ、けど最初からプレイすんの面倒だから途中放棄!!!←

けど今回は3DSのアビスをプレイしながらだから更新できそ、う?←

次あたりでチーグルの森。やっと本編に入ります。

にしても今回の長かった←

ひぐらのえ


prev / next

[ back to top ]