TOA | ナノ


お説教、そして


足が痛い、痺れている。



「馬鹿かテメェは!!」


訓練場に響き渡ったのはアッシュの怒声。びくり、肩を震わせたのは私とアリエッタ。記憶にあるアッシュの髪は今よりも長いから、きっと物語が始まるより前なんだろうと推測。それよりも今は、青筋を立てて怒っているこの赤毛をどうにかしなければ。


『…ごめんなさい』


一応謝ってみたものの、アッシュの怒りは収まらないようで、周りの兵士達もビクビクしている。えっと…アッシュ最強説?ふふ、笑えないかも。


「こんな所で技を出すとはいい度胸してるじゃねェか」
『…なんか、できると思って』
「できると思って、じゃねェんだよ!!屑が!テメェのせいで床がズタボロになりそうだったんだぞ反省しろこのチビ女!」


確かに、こんなとこで特技繰り出した私が悪い。けれどなんでここまで言われなきゃならないのだろうか。屑が!って生で聞けたのは良しとするけどチビ女って…チビって。


『何よ…鳥頭のくせに』
「な、」
『無意識だったんだもの』


正座させられて、足が痺れてきたこともあり私も苛々していた。思わず口にした言葉に後悔なんてない。だってずっと思っていたし、シンクが軽く噴き出していた。ぴくぴくと蟀谷(こめかみ)が動いて一層怒りが増したようだ。


「そこまでにしてやれ、アッシュ」
「…ヴァン、」

「見せてもらったが…ホマレ、お前は筋がいい。剣の特訓をしてやろう」
『え…いい、のです、か?』
「あぁ、構わん
リグレット、アリエッタは譜術を教えてやれ」
「は、」
「わかりました、です」


ぽん、と頭を軽く叩かれてヴァンを見上げると優しい瞳で見つめられていた。こうしていたら、本当にいい人そう、なのにな。


「さぁ、腹が空いただろう。そろそろ食事の時間だ」
「ホマレ、私とアリエッタは先に行く。アッシュと一緒に来なさい」
『はい、リグレット』


反論したそうなアッシュを華麗にスルーしたヴァンとリグレット、心配にこちらを見るアリエッタ、興味なさそうにその後ろをついていったシンクが訓練場から出ていき、溜息をついた。


「仕方ねぇ、行くぞ」
『うん、…っ』
「…どうした」


立ち上がろうと足を動かしたら、ジンジンと足に広がる痛みに目を閉じた。10分以上…きっと30分近くに渡り正座をしていたから感覚がなくなったと思ったら、血の流れが一気に開始されて足が痺れた。動かせない、痛い痺れていて辛い。


「足が痛むのか?」
『ふぇ…、』


眉を寄せて、私の足にそっと触れたアッシュ。思わず、そう思わず。悪気はないのに、声が出た。


『ひゃうぅぅうっ』
「っ!?」


下唇を噛んで堪える。無意識に出た声に驚いているアッシュの服の裾をきゅ、と握った。


『アッシュ、助けてぇ…!』
「ちょ、おいホマレ!」


ビリビリといまだ取れない痺れに半泣き状態になると驚いた、というか困っている様子のアッシュ。何を思ったか、ビリリ、と痛みと、浮遊感。


『っ、ア、シュ?』
「暴れるなよ」


膝の裏に腕を回されて、更には背中にも腕。抱き上げられていると気付くのに時間はかからなかった。ただ、顔に熱が集まっていくのが確かに感じた。



お説教、そして




(アッシュがこんなこと)
(するとは思わなかった)



20110926




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