TOA | ナノ


はじまりは突然


目が覚めたら、何処か分からない場所にいた。此処は何処?家に居て、停電して、大きな雷の音を最後に意識を失った。きょろきょろと辺りを見渡せば、そこは綺麗な花が沢山咲いている草原。


『きれい、』


立ち上がり花に手を添えて、無意識に微笑んでいれば、後ろから"がさ"と数回の音がなり。ゆっくりと振り返ると、見たことのない大きな犬みたいな生き物や、 草がぴょんぴょんと左右に別れていて壷?みたいな形の何か。


『なに、』


ぽつり呟くも、一斉に此方に襲い掛かってきた何かに、思わず目を閉じた。

(殺される、)


ざん、と何かが振り翳されて肉の切れる音が辺りに響いた。暫くしても痛みは一向になく、ゆっくりと目を開けると、其処には真っ赤な髪に黒い服を着た、体格からして男だろう人と、緑の髪にこれまた黒い服を着た、少年だろう人。綺麗な薄い黄色い髪をアップにして黒い服を着た女の人が立っていた。

わけも分からず数回瞬きすれば、白と焦げ茶色の服に茶っぽい髪色をして、髭を生やした男が私の前に立っていた。息を呑む。誰、誰なの、此処は、さっきのは、何。怯えたように後退りすると、困ったように笑う、髭の男。


「怖がらなくていい。私達は何もしない」

「怪我は、ないです、か」


髭の男性の後ろから、小柄なピンク色の髪をした少女が顔を覗かせて、少しだけ、恐怖が退いた。


『わたし…ここは、』
「ここはタタル渓谷だ」
『タタル、渓谷?』


聞いたことのある地名。けれど私の住んでいた所の近くにある名ではないのは確かで、視線をさ迷わせていると、いつの間にか赤や緑、薄い黄色の髪をした3人も私の前に立っていた。


『あの、助けていただいて有難うございました』

気にするな、と笑う髭の男性。ボロボロの服を着ていた私を心配して、彼らは私を保護という形で一緒に連れていってくれることになった。

大きな、見たこともないような乗り物に乗らされて、中にある大きな部屋に案内された。ピンク色の髪の子が案内してくれて、名をアリエッタというらしい。

(アリエッタ?…そんな、まさか)

部屋には髭の男性、薄い黄色髪の女性、赤髪の少年に緑髪の少年。先程はいなかった、がたいの良い灰色の髪の男性がいて、肩を震わせるとそれに気付いたアリエッタが小さな声で"大丈夫"と声をかけてくれた。


「座りなさい」
『はい、』


女性に言われて、髭の男性の前にあるソファに腰掛けると、向けられていた視線がさらにきつくなった。怖い、ただそれしか無かったけれど、今私が頼れるのは、この人達だけ。


「早速、聞きたいことがある
君は、何故武器も持たずあそこに?」

『…分かりません
目が覚めたらあの場所で、見たことのない生き物に、襲われそうになりました』

「それは記憶がない、ということか」
『それも、分かりません
自分の名前と年齢は分かりますが…あそこが何処で何故私がいたのか、何も分かりません』

そうか、と考える素振りを見せる髭の男性。嘘は言っていない。戦う術もないし分からないのは確か。此処にいる人が誰なのかも、わかってはいるけど、分からないようなもの。

「ダアトは、知っているかな?」
『…ダアト』
「……君を、ダアトの神託の盾に迎え入れよう」

「閣下、宜しいのですか」
「記憶がない、謂わば赤子のような子だ。放ってはおけまい。

私はヴァン・グランツ。
今日から君の"家族"だ。君の名は?」

『…ホマレ、私の名はホマレです』
「良い名だ

アリエッタ、リグレット。この娘の世話を頼む。
アッシュ、シンクはホマレの訓練を」


ヴァンの言葉に、其れ其れ了解の意思を告げると、部屋から出た。



はじまりは突然




(本当に、アビスの世界?)




20110924

ジェイド連載夢主の妹、
姫城 誉ちゃんです。

5人姉妹の末っ子。


さてどうなることやら←



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