戦うということ
妹がこちらの世界にいた。一人きりだと思っていたこの世界に、大事な家族がいたことは、本当に嬉しかった。
『イオン様は連れていかれたし、連れ戻すわよ』
「そうですね、」
『あ、そうだわライ、マルコ。二人には頼みがあるの』
イオンを連れ戻してアニスを追い、バチカルへ。これが私のすべき事。ライとマルコには、タルタロスから降りたら直ぐにグランコクマに向かうように言った。陛下に事情を説明してもらわないといけない。
"わかった"と頷いてくれた二人にもう一度リヴァイブをかけて、部屋を出た。ホマレにもし遭遇しても、ティアがいれば大丈夫だろう。
イオン様達は、またタルタロスに戻ってくるらしいから、そこを狙ってイオン様を取り返す。
「、戦いになるのか?」
『…そうね、そうなるわ』
「また人を殺しちまうかもしれねぇだろ」
「…それは、仕方ないわ」
"殺らなければ殺られる"
今、ここが私達にとっての戦場なのだ。正義も悪も関係ない。生きるか、死ぬか。ただ、それだけだ。
ルークは嫌がっている。
当たり前のことだ。彼は何も知らないのだから。
ホマレに会い、私は過去のこと…こことは違う世界で生きていたときのことを、鮮明に思いだし始めていた。ルークのこと、この世界のこと、これからのこと、全てだ。
ルークが知らないのは、仕方のないことなのだ。彼は、彼は。
「どうしたらこの状況を知らずに済むのでしょうね」
『…ジェイド、仕方ないわよ、ルークはお坊ちゃまだし』
「…マルクトに誘拐されかかって以来、見を守るため、お屋敷に軟禁されていたそうですから」
「この世界のことを知らなくて当然…ですか」
子供の頃の記憶がない、俺は何も知らないんだ、とルークは叫ぶ。
ルークが人を殺したのは私のせいだ。私が、兵士を殺していれば、彼は恐怖に震えることはなかったのだから。
「こんなことになったのは私の責任だわ。
だから私が、必ず貴方を家まで送り届けます
そのかわり、足を引っ張らないで。戦う気がないなら貴方は足手まといになる」
ティアは、強い瞳を向けた。ティアは強い、けれど弱い。人に頼ることを知らない、強がりな少女。
「た、戦わないなんて言ってない!…人を殺したくないだけだ」
『ルーク』
「な、なんだよ」
『戦いたくないのなら、後ろに隠れていて。貴方が怪我したら、大変だから』
「あまり戦いたくないだけだ、人を殺すのは嫌だからな」
「私だって……好きで殺しているんじゃないわ」
ティアは、震えるような、気持ちを押し殺したような声を上げた。
誰だって、人を殺すのは怖いし、嫌なことだ。
殺された人にだって家族はいる。その家族から一生恨まれ、罪はついてまわるのだから。
「結局、戦うんですね?
戦力に数えますよ」
「…戦うって、言ってんだろ」
「結構」
「死霊使いの名のもとに命じる
作戦名"骸狩り"始動せよ」
船内に、
ジェイドの声が響き渡った。
戦うということ
(私も、最初は震えたわ)
(今も、夢にでてくるもの)
20111125
久しぶりのジェイド連載
3DS起動率が低すぎる…orz
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