TOA | ナノ


突然の再会

騙し続ける、というか。偽るなんて最初から無理だったのだと思う。



『まず、最初に謝らせて』
「…え?」
『あなた達を騙していたようなものだから』


言うと、大丈夫ですとティアが薄く微笑んだ。頷いて深呼吸して、"私は"と口を開いた。


『ジェイドの副官ではないわ』
「貴女は…」


『マルクト帝国軍、第一師団師団長兼、軍指令長。アリスト・セレア中将よ』
「あなたが、アリスト中将?!」


頷き肯定すれば、がばりと頭を下げられた。


「すみません、アリスト中将とは知らずに馴れ馴れしく…!」
『いいの、私がそれを望んだのよ』
「ですが、」
『…気にしないでいいの、私はあなた達と対等に接したい』


"ね?"と言えば目を反らされた。けれど、小さく"はい"と聞こえてアースは笑顔になる。可愛い妹がまたできたみたいに嬉しくて、ティアの頭を撫でた。


「アリスト中将、!」
『アース』
「…中将、?」
『今まで通りアースでいいわ』
「…わかった、わ。アース」

『ん、ありがとティア

ルークも、改めて宜しくね?』
「戦艦を奪還しましょう」
『アレ、で?』
「はい」


さて動こうか、と部屋から出ようと立ち上がる。するとガチャ、と扉が開いて、見たことのない黒い服を着た少女と、ライ、マルコが入ってきた。


「ここにいて」
「…っ、」
「なるべく、人を殺したくないの」


その声は、ひどく懐かしいものだった。

少女の顔を見れば、私は確信した。ああ、何故。なぜいるの?何故、そちら側に。


「あなたは…」
「神託の盾騎士団、特務師団副師団長、ホマレ・グランツです」

「ホマレ!」
「ティア、だったの?」


ホマレ、といった少女。彼女は、元の世界にいたときの私の妹。末の、可愛い妹だった。

ホマレは姓を"グランツ"と名乗り、ティアとは知り合いのようで。きっと、ホマレはヴァンの元で生活していたのだとわかる。


「…!」
『……。』


こちらを見たホマレは、目を見開き、泣きそうな顔をした。私だって、泣きたくなった。誰も知らないこの世界で、大事な妹に会えたのだ。


「…あなた達を殺しはしない。
けど抵抗したら容赦しない」


"ティアも"と言ったホマレに、こくりとティアは頷いた。部屋から出ていくホマレを見つめると、ぱちりと目が合う。

口許が小さく動いた。"姉さん"そう動いたのを見て、今すぐにでも抱きしめたくなった。

「アリスト、無事だったか!」
「よかった、」


ホマレが去った部屋。ライとマルコが心底安心したように私の頭を撫でる。ごめん、ごめんなさい。2人が生きていてくれて嬉しい。嬉しいのに、


「よか、た」


ホマレが、妹がいたことのほうが嬉しいと思ってしまった。




2人は、致命傷を負ったのだが私のかけた術でなんとか助かり、そこにホマレが現れて治癒をしたという。ここまで連れてきて、今に至る。


「他の船員は?」
「…生き残りは、自分達だけです」
「すみません、師団長」

『仕方ないわ。
2人が生きていてくれただけで、それだけで充分よ』














「ティア、先程の…"ホマレ"と言う少女は」
「彼女は、私の妹です
…といっても、義理のですが」


ホマレは、丸腰で魔物に襲われているところを、任務中だったヴァン達が助けた。身寄りのないホマレにヴァンが兄になると言い、ティアにも紹介したということらしい。


『ホマレは、何歳?』
「年齢は私と同じ16よ。けれど、私のほうが生まれ月が早かったから」


元気でやっていたならよかった。幸せかは分からないけれど、妹はちゃんと、生きていた。



突然の再会



(他の妹達は無事なのか)
(…今は目の前の事に集中しなければ)



20111019

久々のアビス更新
なんというか、まとまらなくて…

アル連載に力を…と思っているので3DSに手がいかないといいますか…←

がんばらなければ!

彼を見ると、俯いたままだった。両の手を見つめカタカタと震えているルークを見て、胸が痛む。
ごめん、ごめんねルーク。助けてあげられたのに、手を汚さずにいられたのに。

物語を変える勇気がない私は、何も言うことができなかった。


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