愛を誓う。








「良かったな、リティル」
「うん、ありがとルドガーっ」


兄弟のように育ってきたルドガーと、本当に姉弟になる。ずっと好きだった人と未来を共に歩む。

女の子の憧れ、結婚。

結婚は人生の墓場だ…っ!って言う人もいるけれど、それはお互いが思いやれば違うと思う。


愛する人と生涯寄り添えるなんて確率は低い。けれどもし愛する人といられるなら、大事にしていきたい。



「リティル、そろそろ行くぞ?」
「わ、待って待って!」
「…こら、忘れ物してる」

「え?なになに……っん、」

「いってきますのキス」

「んもう、ルドガーがいるのに!」

「いいよリティル、もう慣れた」


これから役所に行って、正式に夫婦となる。そんな幸せな日の朝、支度が終わったユリウスはリティルの唇を奪う。

婚約した半年前から、ユリウスはネジが外れたかのようにリティルに甘く、ルドガーの前ならキスだってした。その度にリティルは顔を真っ赤に染めてルドガーに謝る。もう何度も見てきた光景に、ルドガーは笑った。


「兄さん、リティル」
「ん?」
「なんだ?」

「おめでとう。二人が夫婦になるの、すごく嬉しいよ」


二人揃って「ありがとう」と笑顔を向ける。ルドガーも嬉しそうに笑って二人を見送った。




「……もう、未練はないよ。
あんな笑顔見せられちゃ、なぁ」


ぽつり、二人が去った扉の前でルドガーは俯いて零した。

小さな頃から、隣で笑っていた大事な幼なじみ。ずっと見ていたから、彼女が兄を好きだとわかったし、彼女の幸せをずっと祈っていた。
だから、嬉しいんだ。

リティルが、笑うから。

兄さんの隣で、俺には見せない笑顔を浮かべて、幸せそうに笑うんだ。

悔しくなんかない。
どっちも好きなんだから。どっちも、大切なんだから。


「好き、だったよ」


さよなら、俺の恋。
















「リティル、」
「ん?」
「本当に、後悔しないか?」

「…もう、何回目よその台詞。ユリウスは、そんなに結婚したくないの?」

「ち、違う!
俺は、お前より年上だから、おじさんは嫌じゃないか、少し不安になったんだ」


眉を下げるユリウスに、リティルは愛しさが溢れ出す。この人と、今日から夫婦になるんだ。私の、旦那さんになるんだ。


「ふふ、心配しないで?
私、ユリウスはおじいちゃんになっても、ずっと大好きだから」


にっこり、リティルは笑う。その笑顔に釣られてユリウスも笑う。

手を繋いで歩く街。
恋人として歩くのは、もう最後。



「ねぇユリウス、お願いがあるの」
「…なんだ?」


ぴたり、クランスピア社の前でリティルは足を止めてユリウスを見る。ユリウスも足を止めてリティルを見れば、リティルは少し恥ずかしそうに、ユリウスに告げた。



「あと少ししたら、もう恋人じゃなくなるでしょ?だから…」


キス、したいな。


いつもしているけれど、そうじゃなくて。恋人としてユリウスとする最後のキスを、ここで。


「ここで?」
「ここで」
「…知り合いが沢山いるんだが…」

「……ダメ?」


ユリウスの手を両手で包み見上げたリティルと目が合う。ユリウスは「うっ…」と言葉を詰まらせて、目を逸らした。


「…ユリウス、お願いっ」


甘えた声を出して懇願するリティルにユリウスの心は揺らぐ。

恋人として、最後のキス。
さっきはルドガーの前だったから、それが最後というのもリティルに申し訳ない気がする。


「…わかった、」
「、いいのっ?」

「あぁ。…リティル、おいで」


ユリウスが言う「おいで」って言葉が好きだ。すごくキュンとして、胸が苦しくなるほど。


「ユリウスっ」
「っと。
…本当、リティルは甘えん坊だな」

「ユリウスにだけだから、いいの」


―…ね、キスして?


リティルは、おねだりが上手くなったと思う。いつも可愛らしいが、こういう時のリティルはその倍以上に可愛い。


「……んっ、」


ちゅ、とリップノイズは鼓膜を震わせる。あぁ、幸せだ。


「…愛してる」
「ん…わた、しも…っ」


キスを受けながら、ユリウスの服をギュッと掴んだ。















「おめでとうございます」

「ありがとう」
「ありがとうございますっ」


役所に提出書類を全て出すと皆さんが言ってくれて、嬉しくて、泣きそうになった。







「リティル」
「ん?」

「幸せにするよ」
「私も幸せにしてあげる」

「ずっと、一緒にいよう」
「…うんっ」






愛の形は、人それぞれだ。

人の気持ちは目に見えるものではないし、本人以外に気持ちがわかるなんてそうそうないわけで。

けど、目指していく愛の形が同じ人って、すごく素敵だと思う。





沢山の人の中で、出会えた奇跡

次第に芽生えた気持ち

時に泣いて、時に笑って

同じ時間を過ごす度に思う


あぁ、幸せだ…、と。


愛してる、
互いに言い合う言葉は、くすぐったくて、けれど愛しくて。

強く抱きしめて、愛を囁いて。

はにかんで、笑って、また伝えて。

いらないって思わせるくらい、沢山の貴方の愛をちょうだい。



ねぇ、ユリウス


私、すごく幸せなの。


いいのかな?って、不安になるくらい

え、いいって…?
ふふ、じゃあ気にしない


ユリウス、だいすき













「パパ、ママ―っ!」

「こら、危ないから走らないの!」
「はは、いいじゃないか。

…ままは怖いな?」

「もう、ユリウスったら甘すぎよ?」
「リティルが厳しいんだよ」
「厳しくないもん、普通よ」





願わくば、

この愛が、いつまでも変わらぬものでありますように。


愛をおう。
(貴方との未来は、薔薇色)





20121119

終わりまし、た。
本編はこれにて終わりです。

気合いをいれて…!とか言ってたわりにアッサリ終わってしまった感があるのですが…二人は幸せに暮らしました。
未来は子供もいますし、ね。

最後まで読んでいただいて本当にありがとうございました!