思いをぶつけて、







手を繋いでゆっくりと歩きながら帰ってきた二人。絡み合う指に、リティルは嬉しくて、ちらりと見上げると、ユリウスもリティルを見ていたようで目が合う。すぐに目をそらす。

そんなことを繰り返しながら部屋に着くと、ユリウスは我慢できないと言わんばかりにリティルを抱きしめた。いつもより力強い其れにリティルは苦しそうにするも、ユリウスは一向に力を緩めない。


「ごめん、」
「私のためだったんだもん、いいの

……私こそ、理由も聞かずに叩いてごめんなさい」


お前はなにも悪くない、と言うユリウス。なんて優しいんだろう。なんて心が広いんだろう。なんて、

なんてかっこいい人なんだろう。

皆が、ユリウスのことを好きになるのがわかる。だって、だって優しいんだもん。


「好き、好きだよユリウス」
「あぁ、俺もだ」

「……やだ」


ぎゅ、とユリウスの服を掴んだリティル。ユリウスは不思議そうに問い掛けた。


「俺も、じゃ嫌。ちゃんと言って」
「や、そ、それは…だなぁ」


あはは、と笑って、腹空いたな。と話しを変えだしたユリウスに、リティルはむっとしてユリウスをベッドに押した。ぼふ、と布団の上に倒れたユリウスは、手をついて上半身を起こす。



「…こらリティル、危な―――、」



ぎし、とベッドのスプリングが鳴り、ユリウスは言葉を失った。いや、話せなくなった。









リティルはユリウスの唇に己の唇を重ねていた。

触れるだけの口づけに、ユリウスは目を見開いてリティルを見つめると、リティルはまだむっとしており、思わず苦笑を漏らした。


「私は、ユリウスが好き」
「俺も。
…リティルが好きだよ」


手袋を付けていない手で、リティルの頬を撫でる。ちゅ、と音を立てて頬にキスをすれば、リティルは恥ずかしそうに、けれど嬉しそうに笑う。


「久しぶりに聞いた」
「ちゃんと言ってるつもりだったんだけどなぁ…」

「言ってない!ユリウスは機嫌をとるときだけだもん、あまり言ってくれない

そんなの、やだ」

「リティル、」


ユリウスは困ったようにリティルを向かい合うように膝に乗せた。リティルは、顔赤くしてユリウスの胸元に顔を寄せる。





ねぇユリウス。今から聞くことに、貴方は子供だって思うかな、嫌うかな。呆れるかな。

―でも、でもね。

リドウさんの言ってたこと、信じたいの。ユリウスが、色々な人に私のことを「恋人」のことを話してるって。


「ねぇ、ユリウス」
「ん…?」

「私のこと、言ってくれたの?」
「…リドウに聞いたんだな」

「…ねぇ、本当?」


ユリウス、本当?
私、もっと自信持っていいのかな。胸を張って、私はユリウスの恋人だって、言いたいな。ユリウスは反対するかな?


「言ったよ、恋人が出来たって」
「私を守るために、あの女の人を抱きしめたの?」

「…リドウの奴…」
「ユリウス、答えて」


そうだ。と肯定したユリウスに、リティルは「馬鹿!」と怒鳴る。顔をあげてユリウスを睨みつけると、ユリウスはまた困ったような顔をしていた。


「私、そんなに弱くないよ。
別れろって言われたって、絶対に別れない。暴力振るわれたって、負けない」

「お前が傷つくのは、俺が嫌なんだ」



「じゃあ!
…じゃあ私、ずっとその人達から逃げればいいの?
またユリウスが他の女の人を抱きしめてるの、我慢していればいいの?」


溢れ出す思いは


「私は守られるだけ?

ユリウスが私を守るためでも、他の人を抱きしめるのは嫌!」


止まらない。


「ユリウスの恋人だって、胸を張っていたい、並んで歩きたい、守られるだけなんてごめんよ!」


涙を堪えながら、ユリウスに訴える。



ユリウスははっとした。

―…あぁ、俺はこんなにも彼女を傷付けていたのか。

大切だから守りたい。
けれど彼女を傷付けていては守ったことにはならないじゃないか。

ただの自己満足だった。

彼女はこんなにも、強い。
そうだ、彼女が辛い思いをしないように、傍で支えること、それも彼女を「守る」ことになるのだ。


「リティル」
「なに…?」

「ありがとう」



また一歩、近付けた気がするよ。



いをぶつけて、
(私は強くありたい)



20121115

等身大の女の子を目指しているこの連載です。

我が儘だったり、泣いたり、思いをぶつけたり。
縋ることはできないかなーと思ったりもしたので、それは無しですが。

自己満足だったことに気付いたユリウスと、隣を並んで歩きたいと願うヒロイン。

並んで歩く、というのはデートとかじゃなくて、守られているだけの存在じゃなくて「対等」な立場で肩を並べて歩きたい、という意味です。

文章力がないので皆様に伝わっているか不安なのですが(;ω;)

予定としては、あと2つくらいでこの連載は終わりの予定です。

最後までお付き合いいただけると幸いです。