想いを伝えて、











今まで、ごめんな。


そう言って私を力強く抱きしめたのはつい先程のこと。ふわりと香る仄かな香水の匂いになんだか安心して。離さないで、と言葉に出すことはなく、かわりにぎゅっと自分から擦り寄った。
















「ユリウス兄さん、あのね、」


ユリウス兄さん、と屈託ない笑顔で話しかけるのはリティル。幼い頃からの顔なじみでユリウスの弟、ルドガーと同じ年の彼女は、ユリウスにとって可愛い妹のような存在だった。



「兄さんの好きなトマトシュークリーム作ったのっ
良かったら食べて?」
「ありがとう、リティル
美味しくいただくよ」


パティスリーに勤める彼女が、週に何度かこうしてスイーツを差し入れに持ってきてくれることがあった。
ぽん、といつものように頭に手を置いて、自分より頭一つ分以上小さいリティルの頭を撫でた。ぴた、と動きを止めたリティルを不思議に思ったユリウスは、顔を覗き込もうと屈んでみせた。


「リティル?」
「み、見ないで!」


くるり、背を向けたリティルにどうした?と心配した声色で問い掛け、リティルの肩を掴む。ぱ、と振り返りユリウスと目が合ったリティルの顔は真っ赤に染まっていて。涙目で、ユリウスを見上げた。




「、リティル、?」
「あ、う…あの、か、帰る…!」


ぱっと離れて部屋から飛び出したリティルは、リビングでルドガーとぶつかる。「顔真っ赤、どうしたんだ?」とルドガーが問うとリティルは、慌てて「なんでもないの!」と家を出て行った。

ルドガーは疑問符を浮かべるも、夕食のリクエストを聞こうとユリウスの部屋に入る。立ち尽くしたままのユリウスの背を叩き、「兄さん?」と声をかけると、我に返ったユリウスは口元を押さえて「なんでもない」と答えただけだった。








ユリウス達の家とリティルの家は向かいで、街に出ようとしたら音が聞こえてしまう。数年前に両親を無くしているリティルの家を出入りするのは、リティルとルドガー達だけだった。


「あ、リティル出掛けた」
「ははは、よくわかるなぁ」
「ずっと一緒にいたらわかるようにもなるよ」


はは、と笑うルドガーに、ユリウスは一つの疑問が浮かび上がる。もしかして、ルドガーはリティルを、と。もしそうならとても喜ばしいことだし、妹分と弟が家族になれば本当の家族になれるわけで、彼女が独りになることはなくなるということだ。


「ルドガー」
「なに?兄さん」
「お前は、リティルが…」


最後まで言い切る前に、ルドガーは笑って首を振った。有り得ない、と。


「アイツ、ずっと好きな人いるんだよ。俺はリティルを応援してるし…リティルは、姉であり妹みたいな、兄妹みたいな関係だから、有り得ないよ」


ユリウスは戸惑っていた、なぜか、ホッとしている自分がいたのだ。自分はどうしたんだとルドガーの作った夕食を食べながら、思考を巡らせていた。








一方リティルは、いまだ熱い頬に手をあてて公園のブランコに座っていた。


「…バレちゃったかなぁ」


私が、ユリウス兄さんを好きなこと。

いつから好きだったかなんて思い出せない。同級生のノヴァもユリウス兄さんを好きだったけど、私はそれより前からだった記憶はある。
優しくてカッコイイ人、さらには大企業のエージェントだ、ファンだって沢山いる。幼なじみだからってユリウスに優しくされるのが気にくわないと、街のお姉さんに呼び出されたことだってあった。


「けど、ずっと好き…なんだよね」


「誰をだ?」


ぴく、と肩を揺らす。
顔を上げると、風邪引くぞ?と苦笑したユリウスがリティルを見下ろしていた。


「ユリウス、兄さん…」
「リティルには好きな人がいるんだな」
「…うん、いるよ」


そうか、と優しげに笑ったユリウスに、リティルは胸が締め付けられるように苦しくなった。

どんなに想っても、私はユリウスにとってただの妹。どんなに願っても、彼と心が通じることなんてない。

無意識に、リティルの目からは一筋涙が流れていた。突然泣き出したリティルにユリウスは慌てて地に膝をつき、リティルの頬に触れる。はらはらと頬を伝う涙は、涙を流すリティルは、とても綺麗で。

















目が合うと、ユリウスはリティルの唇に己の其れを重ねていた。ちゅ、というリップ音が耳に残りぱちぱちと瞬きを数回してやっと状況を理解したリティルは目を見開いてユリウスを見つめた。離れたユリウスは、リティルに微笑み、腕を引いて立ち上がらせた。


「ユリウス兄さん…?」
「リティル、お前の好きな人は誰だ?」
「…え?」

「どうやら俺は、リティルを他の男にやるのが嫌らしい」


苦笑するユリウスに、リティルは首を傾げる。なんで?と問うと、ユリウスはまたいつものように頭を撫でた。


「妹が、女になったから」
「…?」
「妹だと思っていたが、本当はずっと、そうじゃなかった」


屈託ない笑顔に癒され、兄さんと呼ぶ声に嬉しくなり、一緒にいる時間は心地好かった。
そんな彼女を「妹」と思い続けてきたのは、リティルを「女」として見るのが怖かったから。リティルの全てを欲し、彼女に否定されるのが怖かった。「妹」が「女」になるのが怖かったのだ。


「わたし、」
「リティル、」
「、ん」

「好きだよ」


あぁ、とリティルはまた泣き出してしまう。悲しいからじゃない、これは嬉し涙だ。泣き出したリティルにユリウスは困惑しながらも、そっと肩を抱いた。


「リティル」
「ん、」
「お前は?」


声でわかる、いつもと違うと。今まで聞いたことのない優しい声。声から伝わる、ユリウスの想い。


「私、も…ずっと、好きだった…!」


ぐす、と鼻を啜りながら伝えるとユリウスはなんだかくすぐったくなり、気を張っていたのかはぁと盛大な溜息をついた後に、笑った。あぁ、良かった…と。


「わたし、わたしね…っ」
「はは、そんなに泣かなくてもいい。
…ほら、おいで」


少し手を広げてリティルを見るユリウスの顔は優しかった。また込み上げる涙をこらえて、リティルは迷いなくその胸に飛び込んだ。














「んっ…ふ、ぁ…」
「リティル、」
「にい、さ…」

「こら。
もう"兄さん"じゃないだろ?」


ぎし、とベッドのスプリングが音を上げる。

リティルの部屋、リティルのベッドに優しく押し倒されて、リティルはユリウスからの熱い口づけを受けていた。


「ユ、ユリウス…さん」
「さんはいらない」
「でも、」
「言ってごらん」


リティルの前髪を除けてちゅ、と額に唇を落とす。ひゃ、と声を上げたリティルはユリウスを見つめてぱくぱくと口を開閉させた。

展開が早すぎる…!と。


けれど嫌ではないし、むしろ嬉しさのほうが勝っていた。ユリウスとキスをしている、彼が私を組み敷いている。夢にまでみた体験。


「……ユリウス、?」
「っ、」


ぼそ、と名前を呼んでユリウスを見つめる。ごくりと生唾を飲み込んだユリウスはリティルの頬を撫でて、笑った。


「リティル」
「なに?」
「これから、沢山思い出を作ろう」

「え?」


ちゅ、ちゅ、とキスしながらユリウスは優しく笑いかけた。リティルはきょとんとしていたが、ユリウスの笑顔に釣られて笑みを返し、頷いた。


「俺が、幸せにしてやる」
「ふふふ、私いま幸せだよ?」
「いま以上に、幸せにするよ」

「うん、わかった……、ん…っ」


ユリウスの口づけにリティルは酔いしれていた。ユリウスの首に腕を回して「もっと」とせがみ、それにユリウスは困ったように笑った。



「お前をどうにかしてしまいそうだ」



こつん、と額を合わせるとリティルは固まる。こんなにも甘い空気に慣れているはずもなく、どうしたらいいのかと混乱していた。


「ひゃっ」


ぐ、とユリウスの膝がリティルの秘部を押し付ける。思わず声をあげたリティルに何度目かわからない口づけをし、また笑った。


「可愛いな、リティルは」
「か、からかわないで」
「からかってなんかないさ」


ぐり、と膝は秘部を刺激する。ぴくぴくと身体を揺らしてリティルはユリウスの腕を掴んだ。


「わたし、ね」
「ん?」
「兄さんになら何されてもいいよ」


えへ、と恥ずかしそうに笑ったリティルに、ユリウスの理性の糸は切れそうになる。余裕のないところを見せたくないのだ。綺麗な、真っ白なリティルを汚すことを、ユリウスは悩んだ。年齢的なことじゃない、気持ちの問題だった。


「後悔、しないか?」
「なんで?逆に兄さんは、後悔するの?」


途端に泣きそうな顔をするリティルにするわけないだろ、と言うとリティルの服に手をかけた。


「好きだよ」
「うん、わたしも好き」



して
(通じた想い、)



20121112

長すぎた…!
裏まで持っていけなかったorz
が、しかしこれR15位な気がする。
けどTOX2ってR15だからセー、フ?

18歳未満の方が読んでも話が通じるように次の話を打つのでご安心ください。
18歳(高卒)以上の方は、裏も読んでいただけると幸いです。