募るイライラ




「いい?ルドガー
こんな男に借金なんてしなくていいの、困ったときに助け合うのが家族でしょ」


ルリはルドガーに向き直り、借金返済の書類を持つ。ルドガーは静かに首を振る。「家族でも、迷惑はかけられない」と。ルリはルドガーの胸倉を掴み、真っすぐに目を見た。



ジョルジュ
(募るイライラ)




「姉の命令でも?」
「気持ちは嬉しい。
でも、その金はルリが

ルリが、夜中に泣きながらでも、必死に仕事して稼いだ金だ」


それを、使わせるわけにはいかない。

ルドガーはルリの持つ書類を半ば奪うようにして受け取ると、ペンを持ち直した。


「ルドガー、サインしたらどうなるか、聞いた?」


険悪な雰囲気の中、ジュードが問う。ルドガーは首を振って聞いていない、と答えた。


「簡単に言うと、君の行動がGHSで管理され、制限されるんだ。預金残高も細かくチェックされるはず」


ジュードが言うと、ルドガーはノヴァを見やり、ノヴァは「払えるのに、ぱーって使っちゃう人が多いから」と苦笑まじりに言った。


「で、ぱーっと人生棒にふると。ルドガー君はそんな人じゃないだろ?」


リドウが何か言葉を発する度、行動する度にイライラする。なんでこの人はこういう言い方しかできないの、本当、最悪。



ジュードは他の方法を、と提案するも、結局ルドガーは折れず、書類にサインして契約が成立してしまった。

これは、きっと「決まっていた」んだろう。ここまで折れなかったのは、私が変えることはできない存在だからなのかもしれない。


「では、貸し出した1000万ガルドをリドウ様の口座に」
「ふえてる!」
「悪い、君の家族の治療費を忘れてた」

「リドウ!」

「…わかったって。
そんなに凄まないでよ」


怖い怖い、と悪びれもなく言ったリドウに、ルリは「ルルもなしだよね」と疑問符を浮かべずに言うと「はいはい」と溜息をついたリドウ。


「君達の家族の分を引いて800万。これ以上の減額はしないよ」


言って、リドウはバーを出ていった。ルドガーは俯き、ルリは溜息をついて、リドウが出ていった扉を睨みつけた。


「そんなに落ち込まないで、ちゃんと返済できるように一緒に頑張ろ!」
「…あぁ」


ノヴァが気遣って声をかけると顔をあげたルドガーは、頷いてルリを見、ごめんと呟くように言った。


「馬鹿、怒ってないよ」
「ありがとな、ルリ」
「いいよ。
でも返済の協力はする。私の貯金は気にしなくていいからさ、ね?」


ありがとう、ルドガーは笑って、ルリの頭を撫でる。ルリも、やっと笑顔を見せた。


「それじゃ、トリグラフに戻ろうか」
「そうだな、」
「ん、じゃ行こっか

ノヴァ、またね」
「うん、今度飲もうねルリ」
「GHS連絡して、待ってるから」



ジュードの提案にのって、ルリ達はバーを出てドヴォール駅に向かい歩きだした。



(募るイライラ)


20121118

3日ぶり更新
手元に手帳がないとダメですね。全然打てません(笑)