少年ティーチャー




「あれ、もしかして二人共アローサルオーブ持ってないの?」


ルリは首を振り、ルドガーは頷いた。なぜルリが持っていたかは…自分の部屋の引き出しに入っていて、ユリウスに何か聞いたところ説明してもらい、それから持つようにしていたのだ。



ジョルジュ
(少年ティーチャー)



アローサルオーブは、リリアルオーブの代用品である。現在ルドガーに説明しているジュードの話を聞きながら、考えていた。リリアルオーブより面倒なやつだよなぁ…と。これで共鳴(リンク)できるようになったら、色々と楽だろうな。


「じゃ、実戦といこうか!」
「あぁ!」


武器を構えたルドガーに突っ込んでいくアルクノア兵。ルドガーの後ろを狙う兵を蹴り飛ばすと、アッパーをかましたジュードが兵を倒した。ルドガーとジュードはリンクして、攻撃力もあがったようでサクサク戦闘が進み、先頭車両までの距離は近付いた。


「そういえば、ルドガー」
「ん?」
「なんで駅員に捕まってたの?」

「あの子にハメられたんだ。…痴漢扱いされて」

「ルドガーが痴漢?」
「…ロリコンじゃなくて?」

「ルリ!」
「あは、冗談冗談」

「でもルドガーは痴漢じゃないよ」
「まだ会って数時間なのに、もうそんなに信用してもらえたの?ルドガー」
「…えっと、」

「何となくだけと、年下趣味には見えないし…それに、もし本当ならテロより先に叩きのめすけど」


にっこり、素晴らしい笑顔で言い放ったジュードに、ルドガーは肩を揺らす。やってはいなくても、驚くのは無理もない。私もビックリしたし。


「冗談言ってる場合じゃないね、急ごう」
「…あぁ、」


「ルリ」
「なに?ルドガー」
「無理、してないか?」

「してないよ、大丈夫。
ありがとね」


進みながら、ルドガーが心配してくれて、私は心がポカポカする感覚。もし双子じゃなかったら、きっと好きになってたんだろうな…こんなに優しいし。


「ルリは、まだ戦い慣れて、ない?」
「うーん…大丈夫って言ったら大丈夫だけど、人を相手にするのは、これが初めて、かな」


あは、と笑うとジュードは目を見開いてルリの腕を掴む。首を振って、無理しないで。と眉を下げて言ったジュードに、ルリも目を見開いて、それからはぁ、と溜息をついたが「大丈夫」と笑った。


「ルドガーと一緒に行くって決めたの。戦いは久々だから怖い…っていうのが本音だけど、ルドガーを一人にしたくない。

…絶対に」

「…そっか。わかった
でも無理はしないでね?辛くなったら僕が倒すから」
「ありがとう、その時はよろしくね?」


笑って言うと「う、うん」と顔を背けたジュードに疑問符。さぁ前に進もう、と先頭車両に向かう。近付くにつれて心臓がドクン、ドクンと五月蝿い。先程までの戦闘は、ジュードとルドガーが数秒でのしていたから、私は戦っていなかった。だから、これからどうなるのか考えたら、覚悟は決めたけれど、不安だし、怖い。






「…あの奥が運転室よ」
「わかった。僕が先に行くね。フォロー頼める?ルドガー。
ルリは無理しない程度に」
「…あぁ。でも、」
「大丈夫なの?」

「大丈夫、こういうの慣れてるんだ。
本業は、医学者なんだけど」


はは、と笑うジュード。
物音が聞こえて立ち上がり、「行こう」と駆け出す。
階段の上を見ると白いコートが見える。白い、コート…髪の色は、兄さんと、同じだ。

階段を上ると、白いコートの男が、兵を殺して、いた。


「これは…!」


ジュードの声か聞こえたらしい男は振り向き、ルリとルドガーの顔を見て驚いた。


「ルドガー、ルリ!?
なぜ……」


手には、銀色と金色の懐中時計を持っているユリウス。その時計をぎゅっと握りしめた。


「私は、仕事」
「そう、だったな」

「兄さんこそ、どうして!?」


ルドガーの問いに、「仕事だよ」と返すユリウス。ルリはわけがわからずパチパチと瞬きをするだけ。ルドガーは、驚きを隠せない。


「ふふ。私はいい部下をもった」


背後から声。エルとビズリー、そしてヴェルが歩いてくる。ビズリーの声は、なんだか嬉しそう…というかこの状況を楽しんでいるみたいだ。


「流石はクラウンエージェント・ユリウス。仕事が早い」

「戯れはやめて下さい、社長」
「しかし、こんな優秀な兄弟がいたとは…大事に守ってきたようだな。優しい兄さんだ」


「っ、当然だろう…!」


ビズリーの言葉に歯を食いしばったユリウスは双剣を振るうも、ビズリーはいとも簡単に避けてしまう。「いいのか?兄弟の前で」と嘲笑うビズリーに、ユリウスは「くっ……!」とまた歯を食いしばり後ろに下がる。






「、危ない!!」


倒されていたと思っていたアルクノア兵が、こちらに向かって銃を向けていた。すかさずルドガーは少女を守り、ルリはジュードに腕を引かれてジュードの胸にダイブしていた。


(わ…いい匂い)


「ルリ、大丈夫?」
「うん、へいき。
…、ルドガー?!」


「ぐぁぁあああぁあ!」


ユリウスの手から金色の時計が宙を舞った。カッ、と少女の首にかかっている時計と、その時計が光る。少女の腕を掴むルドガーと、共鳴しているかのように。



(07 少年ティーチャー)

20121109


今回は長くなりました。
ちょっとこれから更新速度を遅くします(;ω;)多分ですが。

きっとすぐChapter4とか5になっちゃうので、X連載の終わりと合わせていきます。…多分←