皆と過ごすこの幸せが、ずっと続けばいいのにって思ってた。
おちゃらけて、本当の気持ちなんてわからなくて、好きだなんて言葉も冗談で、私の気持ちを知ってて、からかってるだけだと思ってた。
「俺様本気なんだけどなぁ」
「む、嘘でしょ、それも」
両手を頭の後ろでクロスさせて、"でひゃひゃ"なんて彼特有の笑い。たまに、なんの感情もない瞳を見せることはあったけれど、彼はいつも笑ってた。
「もし、私がゼロスを好きって言ったら、どうするのよ」
「ん?そのときは、美味しく戴くぜぇ?」
「、ヘンタイ!」
にっこり、ではなくニヤリと笑ったゼロスのお腹を殴りつけると、ゼロスは"うぐ"とくぐもった声をあげてお腹を押さえながら笑った。
「っ、く…」
「え、ちょっと、ゼロス?」
「目眩しただけだから、大、丈夫だって」
笑ったかと思えば、ゼロスはふらりと身体を揺らした。目眩だとは言ってるけれど、不安になる。本当に大丈夫、だろうか。
「大丈夫、なの?」
「…大丈夫だって、」
「でも、」
「…、」
「ひゃっ」
眉を下げてゼロスを見上げたリティルの腕を引き己の腕の中にすっぽりと収まらせた。リティルは目を見開きだんだんと顔に熱が集まるのを自覚する。
暴れようにも、目眩がすると言っているゼロスに乱暴なことはできない。かといってこのままだと心臓がバクバクで音がゼロスに聞こえるんじゃないかってほど。顔も絶対に赤いし、恥ずかしいし緊張するし!
「…何か、あった?」
「へ?」
「なんか、変だよゼロス」
"リティルちゃんはあっかいねェ"とか"俺様ラッキー"とかでひゃひゃと笑っていたゼロスが、突然黙った。加えて私を抱きしめる力が強くなった気がする。思わず言ってみれば、抜けた声を出したゼロスを見ようと顔を上げようとしたけれど、後頭部に手を添えられてそれは叶わなくなった。
「ゼロス、」
「ちょい聞いて」
「なに?」
「もし、もしも俺様がリティルちゃんに剣を向けるときがあれば」
「え、な、」
「迷わず、殺してくれな」
"馬鹿じゃないの"って、言ってやりたかった。いつもより低い声で普段のおちゃらけなんて一切ない。
ゼロスが離れて、やっと顔を見たら。
ゼロスは、見たこともないくらい優しい顔で笑ってた。
「約束、してくれるよな?」
「…や、くそく…?」
「そ。俺様が剣を向けたら、リティルちゃんが、俺様を殺すって約束」
幸せは続かない
無理矢理約束された数日後、ゼロスは私達の前に敵として現れた。
"リティル、約束守ってくれよ?"
そう言って、また柔らかく笑ったゼロスに、私は剣を向けた。
溢れる涙は止まることを知らない。
ざしゅ、と肉の裂ける音は私がゼロスを切り付けたから。鮮やかな鮮血が散るその場に、私は崩れた。
ありがとう、
血を吐きながら、苦しいはずなのに笑みを浮かべて、私の頬に触れる。
「愛してた」
するりと力なく垂れた手。もう握り返されることのない、ゼロスの手。
最後に聞いた貴方の声は、私に後悔しか残さない、甘く残酷な言葉だった。
20111219
最後の「」は反転したら文字が見えたりするかもしれません←
初めてのゼロスだというのにこの暗い内容はどういうことでしょうか←
ゼロスさよならルートで打ってしまった。本当はハッピーエンドの予定でした。が、勝手に指がさよならルートを打ってました←←
20121116
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