TOX | ナノ

第三者の思い

「アル、」
「なんだよ、プレザ」


久しぶりに、目を見て呼ばれた現在名乗っている名。

とくん、だなんて裏切られて捨てられたというのに、私の心はいまだ馬鹿みたいに鳴る。

もう恋なんてしないわ、この男に捨てられてから私は恋なんてしないと決めたのよ。

ちらり、アンを見ると瞳が揺れていた。きっと、アミュレインの心も酷く傷付いているのだと悟る。



「あの子…アミュレインは、鈍いし疎いし、大変だと思うけど」


"せいぜい頑張れば?"と言えば、"は?"と間抜けな声が男、アルヴィンから発された。

え、もしかして無自覚なの?


「…アミュレインのこと、好きなんじゃないの?」
「は?え、ななんだよ急に」


吃るアルヴィンを、プレザは初めて見た。数日の間一緒にいただけだったけれど、利用されただけだけれど、彼とは一応は恋仲だったのだ。けれどプレザはアルヴィンのコロコロ変わる表情など見たことがなく、内心驚きつつも、少しだけ切なくなった。

アミュレインを抱きしめたときのアルヴィンの顔は、儚げで切なくて、そんな一面を見ることができて嬉しかった反面、苦しくもあった。



(私にはそんな顔見せたことないくせに、)


醜い気持ちがぐるぐると巡る。けれど仕方ないのだ。私はただの、利用された都合のいい女だったのだから。


「…大事にしてあげて」
「プレザ」

「私、貴方なんて何とも思ってないもの

…アミュレインを泣かせたら許さないわ」
「…一応、わかったって言っとくわ」

ぽん、と頭を撫でられて。ふ、と優しげな笑みを向けられて、またとくんと胸が鳴った。

鳴り止めと願う心と、いいじゃないと思う心。どちらも同じくらいの気持ち。


「んじゃ、俺は行くわ」


アン達に背を向け、ひらひらと去っていったアルヴィンを、アンは唇を噛み締めて見送った。

無意識に、自分でも気付かずに、この子は、アミュレインは、変わってきてる。


私達との戦闘に、迷いがあったのが分かった。陛下の敵であるマクスウェル一行に潜入、だなんて優しいアミュレインは直ぐに感化されて情が湧き、始末なんて出来る筈がないと、陛下だって理解しているはずなのに。


「…アミュレイン」
「あ、え、プレ、ザ」

「どうしたのよ」
「や、べ、別に何も?」


目を泳がせるアミュレインは、凄くわかりやすい。今だって、私とアルの会話に嫉妬していたのだろう。

恋を知らないアミュレインが、ウィンガルを忘れて次はアル…あぁ、この子は厄介な男に惹かれる子なのね。


「恋愛相談なら、いつでも聞くわよ?」
「なっ、恋愛って」


林檎のように真っ赤に染めた頬、明らかに動揺して視線をさ迷わせるアミュレインに思わず吹き出すと、む、と口を尖らせた。


「恋なんてしてないわよ」
「あら、そうなの?」
「、プレザ!」
「ふふ、ごめんなさい」


久しぶりに笑いあった。
前回は時間もなかったし、直ぐに戦闘になったから。


「…ウィンガルが起きたら陛下の元へ行くわ」
「わかった、私も一緒に行く」


ぐ、と乱雑に切られた黒髪を引っ張り、現れたのは綺麗なミルクティ色の長い髪。



第三者の思い



(アミュレインには)
(プレザには、)

((敵わない、))


20111107


ぎりぎり7日…!

本日は、プレザ視点でお送りしました\(^O^)/

プレザたんの心情とか、捏造すぎますがね!w

プレザたんは、アルが好きだけど、その前に仲間であるヒロインが好きなんです。
ていうか、プレザたんがもし男、若しくはヒロインが男だったら絶対くっついてます←



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