TOX | ナノ

胸の奥の痛み

オルダ宮殿。そこは彼の友がいる場所。


戦争が始まっているというのに、宮殿の警備は厳しくなさそうで、皆疑問符を浮かべる。宮殿の入口には兵士が二人。

指名手配されている二人がいるのだ、そう簡単には通してなどくれまいと、強行突破で通過することに。戦闘にうずうずしていると、ぽんと頭に誰かの手。振り向かなくてもわかった。アルヴィンが苦笑して"無理はするなよ"と言うも、アンは剣を抜くと我先にと突っ込んだ。


「アン!?」
「無理しないでよ?!」


剣を振るうアンはまるで舞っているかのように軽やかで優雅で、楽しそうに敵に切りかかった。


「アン、いきます!」
「お願い!」


エリーゼの精霊術に合わせて高く飛び上がり上から切り付けると敵は絶命した。


「まだ本調子じゃないのに無理しちゃ駄目だよ」
「ごめんねジュード」


"なんだか楽しくて"と笑うアンに、溜息をついたジュードは、アンに治療して笑った。


ハロウの羽音がする。
宮殿に侵入しようと進んでいる彼らの1番後ろにいたアンは、空を見上げた。"ハロウ、"と小さく呼べばふわりとおりてきて、括りつけられている手紙を外す。

アルクノアからの連絡だった。かい摘まんで言えば、イル・ファンでちょっとした仕事があるらしい。この中から抜けることは、今の自分なら余裕なことで。

それを、アルヴィンが見ていたなんて知らずに、アンはポケットにしまい、ふらりと身体を倒した。


「アン、アン!」
「……レ、ア?」

「どうしたの、やっぱり調子が?」
「えへへ…そ、みたい」
「アンは、待ってて」
「で、も」
「そんな状態で、ナハティガルを討てるとは思えない」
「っ、」


傷付いたフリをする。足手まといは嫌だ、私も行きたいのだ。そう彼らに思い込ませるために。


「…さっきの戦闘、張り切りすぎたんじゃねぇの?」
「…そう、かなぁ…
ごめんなさい、みんな」


"気にしないでいい"とミラが頭を撫でた。"じゃあ行ってくるね"と眉を下げながら言う彼らを見れなくて俯く。なんて簡単、こんなに優しいなんて馬鹿みたい。

(笑っちゃいそうだよ、)


「…ま、程々にな」
「な、にが?」
「鳥。気付いてないとでも?」

「…ふふ、流石スパイね」
「プレザか?」


(や、めて)


「教える義理はない」


アルヴィンが、プレザと呼んだとき。なぜか、何故かわからないけれど、胸の奥がちくん、と痛んだ。やめて、やめてよ呼ばないで。なに、なにを考えてるのわたしは。


頭をぽんぽんと優しく叩かれて、私の胸はまた苦しくなった。触らないでほしかっただけよ。なにを考えてるのよ。あの男は敵で、プレザの、好きな男で彼女を傷付けた男じゃない。やめ、鳴りやめ。



胸の奥の痛み



(イライラする)
(なんだっていうのよ!)



20111017

回りくどい表現が好きな飛倉です←

昨日は更新できなくてカナリ焦りました。
起きたら日付変わってた…orz

今日もう1話更新できたらしたいのですが0時を過ぎた途端に携帯が止まってしまうので明日の夜にまた更新したいなと思います。




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