TOX | ナノ

着せ替え人形

子供は無邪気で、そして残酷で素直だ。


カラハ・シャールの領主邸で、壁に追いやられた時の事。口づけされた後、耳朶を甘噛みしたアルヴィンに肩を揺らした私は、こんな昼間から盛らないでほしいと内心思いながら、抵抗するのも面倒で目を閉じた。


「アン、買い物に行こう、…よ、!」


がちゃ、と扉の間音が聞こえて目線だけ向けると、お子様組が居て、茹で蛸のように顔を真っ赤にしたジュードとレイア、そしてどこからかロッドを出したエリーゼが、こちらを凝視していた。


「アルヴィン、変態…です!」


"ピコハン!"と聞こえると同時にピコピコピコピコ、と景気のいい音が鳴りアルヴィンの頭を襲った。溜息をついたアルヴィンは私から離れてお子様組を見やり、からからと笑う。


「ジュードにレイア、大人の邪魔はしないもんだぜ?」


ぽん、と二人の肩に手を置いてくすりと笑ったアルヴィンに"ば、ばか!"とジュードが叫び、ぱくぱくと口を開閉させているレイアに笑ってしまった。いまだ怒りが収まらない様子のエリーゼの前まで行き頭を撫でてやると、腰にぎゅ、と抱き着かれる。かわいい、素直に思った。

「大丈夫だよ、エリーゼ」
「でも…でも、!」
「なんにもされてないから大丈夫。それよりも、買い物に行くんでしょ?」

「そ、そうだった!
シャン・ドゥで買えなかったから、アンの服新調しに行きーます!」


いつもの調子を取り戻したレイアにくすりと笑う。まだまだ子供、ああいった場面は見慣れてないだろうし…というかレイアが見慣れてたらそれもなんか嫌だけど…、興味はあるみたいだから、今度そのネタでからかってみようかな、うん。なんてちょっと大人の余裕をかまそうとしてみた。


「…エリー、」
「、!」


腰に抱き着いたまま離れないエリーゼの頭を撫でながらティポが呼んでいたように呼んだ。すると、顔を上げて、目を見開くエリーゼ。嬉しそうに、なんだか幸せそうに笑ったエリーゼは、少し大人びているように感じた。


「もう一度、呼んでください」
「…、エリー」
「、はいっ」


にっこりと笑ったエリーゼ。"行きましょう、アン"と腕を引かれてシャール邸を出た。ドロッセルが案内してくれるんです…!と嬉しそうに笑うエリーゼを見て、ジュードやレイアも笑う。

「アンの服を探すのよね?
…アンはスタイルが良いから、身体のラインを出した服が…」

「…ちょ、ちょっと待ってドロッセル」
「え?なにかしら」


ミラはスタイルがいいから露出したりラインがはっきりした服でも構わないだろう。エリーゼとレイアは今の服装が似合っているし、まだ若いからフリフリのレースだって似合う。けれど、今の私は晒布をしていて胸はぺったんこだし、括れだってない。


「私、露出がないほうが…」
「アンは、なんでも似合います!」
「そうだよ、まだ若いんだし!」


"へいきへいき!"と笑い飛ばすお子様組を、心底羨ましく思った。













「…これスカート短い!」
「似合ってます、アン!」
「いや、コレじゃパンツ見えちゃう…」
「大丈夫だよー、」

「…パンツ見えたら、またアルヴィンに…」

「、ダメ、です!」
「この服却下!
ドロッセル、あまり肌を露出しない服持ってきて!」


最終的に、白い七分のシャツに黒いベスト、ベージュのキュロットに決まった。着せ替え人形のように数時間で何着も着替えて、げっそりしてシャール邸に戻ると、ミラが"ふむ、そういった服も似合っているな"と薄く笑った。


「アン、お前眼鏡は?」
「…エリーゼにとられた」



着せ替え人形



(アンに、近付かないでください!)
(エリーゼ、レイア武器構えるな!)



20111012

シリアス満載だったのに、一気にギャクに…!


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