TOX | ナノ

ベッドの端、


カラハ・シャール。そこは、民が領主を慕っていた街。


ワイバーンが落下して、涙を流していた私は、アルヴィンに宥められて、すっかり安心してしまい意識を失っていた。

ふと目を開けると、そこには見たことのない少女。ぱちりと大きい瞳がす、と細まり手を叩いた。


「目が覚めたのね、よかった…どこか痛む?」
「あ、平気、です…」
「いま、エリー達を呼んでくるから、まだ寝ていて?」


にっこりと笑った彼女はぱたぱたと小走りで部屋をでた。エリー、とはエリーゼのことだろうか。

数分してバタバタと五月蝿い足音、複数聞こえることから2人以上だろう。ばん、と開いた扉から現れたのはエリーゼ、レイア、そしてジュードだった。


「アン、大丈夫、ですか?」
「よかった、目覚まして」
「心配したんだから!」


エリーゼとレイアに抱き着かれる。くすりと笑って頭を撫でてやると嬉しそうに二人が笑った。もう大丈夫だからと起き上がりミラ達が待つという1階の広間に行くと、もう大丈夫なようだなとミラも笑った。

ここはカラハ・シャールの領主の家ど、先程の少女はドロッセルというらしい。エリーゼをエリーと呼び、彼女らは友達同士だという。私とレイア以外面識があるようで、"アンといいます、"と笑ってみせると、綺麗な笑みを浮かべて"エリーから聞いているわ"と言った。私は半日以上眠っていたらしく、ワイバーンを治療するのに時間がかかるらしい。少しの間、カラハ・シャールに滞在した後、イル・ファンに向かうとジュードが言った。

そういえば、ウィンガルは去り際にローエンに何か言っていた。"指揮者(コンダクター)"の異名を持つ、ローエン・J・イルベルト。それは、ウィンガルが負けたくないといつも口にしていた名だった。マクスウェルが討とうとするラ・シュガルの王ナハティガルは、ローエンの友人らしく、彼は友人と戦うことに迷いがあった。



「よ、大丈夫か?」
「…アル、ヴィン」


"まだ寝てなきゃダメ、です!"とエリーゼに部屋に閉じ込められ、することもないから溜息をついてベッドに寝転がった。少し日にちもあるようだし、ガイアス様への連絡は明日でいいかなぁ、とぽつり呟くと、不意に聞こえた声。

声の主は、できるなら今は会いたくなかったアルヴィンだった。人差し指と中指をくっつけて額にあて、閉めた扉に寄り掛かる男の顔が見れなくて、窓際まで、避ける。


「無視はやめろよ、無視は」
「…話し掛けないで」


"傷付くなぁ"と笑うアルヴィンに、そんなこと思ってないくせにと悪態をつきたくなったが、ワイバーンに乗っていたときの失態を思い出し、そんなことを言う気力さえなかった。


「おたく、高所恐怖症なんだな」
「…ちがうわよ」
「あんながっちり掴むから、シャツに皺ついちまったんだぜ?」


"ほら、見てみろよ"と言うアルヴィンを見れなくて、"知らない"と言う。近付いてきたアルヴィンに少しずつ後退り、膝の後ろにベッドの縁が当たり、ぼす、と音を立ててベッドに座り込んだ。


「逃げるなって」
「ち、近づかないで!」


ぎし、とベッドに膝を立て、指で私の頬をなぞる。其れと私を見るアルヴィンの目に、彼から逃げるようにまた後退った。ぎしぎしとベッドが軋み、ついには壁に背があたる。


「あんなコト、した仲だろ?」
「っ、!」


低い、低い声が鼓膜を刺激し、思わず目を見開くと、目の前には男の顔。キスされていると理解するのに、数秒要した。



ベッドの端。



(二度目のキスは)
(何故か泣きたくなった)



20111012

この後、エリーゼ達が来てアルヴィンはボロクソ言われてしまえ←

というかボロクソ言われますきっと\(^O^)/←


夢主の気持ちの変化が私でもわからないというw




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