私は、彼のことが大嫌いだ。
赤子同然だった私と一緒にいてくれた陛下。陛下には感謝してもしきれない程だ。ア・ジュールの王、ガイアスの傍にいることを許されて、もう二十年。四象刃に数えられてはいないけれど、陛下に一番近い位置にいる。それが私。プレザやアグリアとかそれなりに仲もいいしウィンガルとは色々と話が合う。ジャオは父のような暖かい人で私は結構好き。私の存在は、世間ではあまり知られていない。その為、様々な任務を今まで行ってきた。(噂とか過去を知る人は私を知ってるけど)
今回も、ガイアス様からの命令で、長期間の任務につくことになりイル・ファンから"クルスニクの槍"を盗んだとされる精霊マクスウェルとその一行を監視、あわよくば其れを奪う。バレれば死あるのみ。それは陛下からかマクスウェル一行からか…どちらからでも有り得る事だ。だが幸いなことに、裏切りを繰り返すアルヴィンがいた。私が紛れても、彼の裏切りのほうが目立つだろう。今までも怪しまれず絶対にバレないよう仕事をこなしてきたのだ。私は、陛下のために、全てを捨てる覚悟だって出来ていた。
「アン、眼鏡はずしてよー」
「あ、ちょっとレイア」
仕事しかしてこなかった私はマクスウェル一行には、簡単に入り込む事ができた。アルヴィンに気付かれやしないか、それだけが心配だった記憶があるけれど、先日のガイアス様に謁見した際、彼は私の存在に気付き、契約を結んだ。"傭兵のアルヴィン"とその契約をしたわけで、それはきっと破ることはないだろうと思う。あんなこと、したのだから。
アルヴィンと契約してから一週間程経った。あの日、私の部屋を一人部屋にしてくれて少し離れた部屋にしてくれたらしいジュード達に心から感謝させられた。(あの男、信じられない!)現在はシャン・ドゥの宿屋。ワイバーンはもうすぐ準備できるようで、それまで待機、となっていた。
「だってさー、アンの格好、どうにかならないの?」
「コレお気に入りなんだけどなぁ」
「若いんだから、お洒落しなきゃ!」
「そう…です。アンは可愛いんですから」
レイアとエリーゼに言われて、改めて自分の服装を見た。乱雑に切られた黒髪、白いシャツ、黒い短パン。顔を見られたくないから、分厚い眼鏡をしていた私。一度、眼鏡を取られたことがあるから顔を知られているけれど、彼女達なら大した支障はないし。アミュレインとして会ったときも、髪で顔をかくしていたからバレてはいないし。
「ミラみたいにスタイル良いわけでもないし、誰も私なんてみてないよ」
「わかんないよー?」
「アルヴィンは、女なら誰でもいい変態…ですから」
あらら裏切り者アルヴィン、酷い言われようだこと。心の中で笑う。確かにアルヴィンは変態、というかなんというか。女に困っていない男なだけあって…という感じだ。声にだして笑ってしまったら折角創り出したキャラクター像が壊れてしまうから、くすりと最小限の笑いに留めた。。
「おいおい、変態とは酷いんじゃねぇの、エリーゼ姫」
「…本当のこと、です!」
"アルヴィン君へんたーい!"とティポが叫んでいるのを横目に、ローエンやジュードのいるところまで歩いた。出来るだけ、もうアルヴィンとは関わりたくないのだ。
「ローエンさん、ジュード」
「おやアンさん」
「どうかしたの?」
「…グミ補充してきますね」
「うん、お願いしてもいいの?」
「どうせ暇ですし、この前迷惑かけましたから」
"いってきますね"と宿屋の一室から出た。ゆっくりと階段をおりていくとがちゃり、扉の開く音が聞こえた。"待てよ、"と聞き慣れた声に振り向くと、そこにはアルヴィンがいて、思わず眉を寄せてしまった。
「明白(あからさま)に嫌そうな顔しないでくれよ」
「…だって」
笑うアルヴィン。彼といると、どうしようもなく苛立つのだ。彼の、考えや行動に。自分を守る為に人を裏切る、この男が。あんな事があったのに、何食わぬ顔して話し掛けてくるこの男が。
あんたなんか
20111008
20111201)修正
あれ?←
連載始めちゃった?←
ていうか何この意味わかんない文章www←
夢主はア・ジュール王ガイアスの側近で四象刃とは違い世間にはあまり知られてないけれど四象刃より強いかもしれないと言われる子。←
アルヴィンのことは知られたらヤバいから遠ざけています、はい。
プレザとは親友で互いのことをよく話します。
アグリアは妹的存在、彼女にはネェちゃんと呼ばれてます←ぇ
因みに、年齢は23歳。
アルヴィンの本名を何故か知っています。
ひぐら
上記はアル連載を開始する際、一番最初に書いたやつ。本当はこれを1話にするつもりだったのですが、それだと話がおかしくなるので…。
いやはや、ここにくるまで長かったです。笑
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