「なー、澪」
ふらふらと本部の廊下を歩いていたら見慣れた後ろ姿がひょこひょこと歩いている。
いつものように声をかけながら頭の上に腕を乗せると、ぐえ、と返答の代わりにへんな声が返ってきた。女子としてどうなのかと思ったが言ったら怒るからな。
「さっき太刀川さんと何話してた?」
「なんのこと」
「さっき、自販の前で太刀川さんとふたりっきりで話してたろ?」
「んー」
いつもなら反撃の一つでもしてくる澪がおとなしいうえに返事がなんだか上の空だ。
なんかおかしいんだよな。
「何の話してたんだ」
「別に……当真には関係ないはなし」
「ほんとか?」
「うん……」
絶対に何か俺に隠してる。別になにからなにまで全部話してくれとは言わないが関係ないと突き放されたのが悔しいようなつらいような。
「なぁ、なんか隠してんだろ」
「あーもう!ちょっと一人にさせて!」
バッとこっちを振り向きながら、普段とは違う力のこもった声で怒鳴るように言われた。
「おい……ほんとにどうしたんだよ」
「あぁ、もう、ごめん。ちょっとほっといて」
そのまま顔を隠すように下を向いて早足で去った澪。
訳が分からずに立ち尽くす俺。太刀川さんが何を吹き込んだのかわかんないが、俺は一体どうしたらいいんだろう。といあえず、冬島さんに聞くべきだろうか。
当事者 当真