「鋼くんたすけて……」

「澪か、どうした?」


昼休みに購買へ飯を買いに行った帰り、制服が後ろから引っ張られた。振り向くと、見慣れた顔がいた。学年は一緒だがクラスが違うために、普段はボーダー本部で会った時くらいしか話さない澪だ。


「荒船にころされる……」

「どういうことだ?」

「テストの点数、80いかなかったぁ」


泣きそうな顔をした彼女からことの詳細を聞く。自業自得の気もするが、とりあえず後で穂刈にでもちゃんと話を聞きなおそう。


「なるほど。そういうことか。当真の点数はどうだったんだ?」

「知らないし!どうせ追試でしょ」


「俺のこと呼んだ?」

「うっわ、当真」


澪の背後から声が聞こえたかと思ったら、そのまま澪の頭に腕を乗っけるようにして会話に参加してきた。身長差的にちょうど腕を置くのにいいのだろう。


「おいおい村上、なんで俺の澪くどいて、痛って」


いつもの笑みが途端に吹き飛んで、つま先を抑える当真。力をこめた澪の上履きの踵が当真のつま先を踏み抜くのが見えたが、あれは痛いだろうな。


「鋼くんに絡むなバカ不良」

「俺を省いて密会してるほうが問題じゃねえの?浮気じゃねえか」

「浮気じゃないし、付き合ってないし。あ、というかテストどうだったの!」

「半分いってない」


きょとんとした顔をした後に、得意げな顔になった意味を知りたい。


「バーーーカ。荒船に怒られんじゃん」

「じゃあ澪は80超えたのかよ」


当真の切り返しに対して、うっ、と言葉に詰まる澪。少しの沈黙の後に小さな声で答えた。


「……超えてない」

「しょうがない。一緒に荒船に怒られようぜ」

「いーやー!!」


いつものことで慣れきってるためにとてもいい笑顔の当真とぶんぶん顔を振って嫌がる澪。

そういえば、この前、荒船に当真カップルには気を付けろ巻き込まれるぞ。と言われていたがこのことか。


「とりあえず、オレは教室帰っていいか?」

「わー、待って鋼くん見捨てないで」

「澪には俺がついて、痛てぇ、あごはやめろ!」

「いい加減、離せ!学校の廊下だ!」


邪魔をするのも申し訳ないし、そもそもこの前の荒船の話し方を考えてもオレがなにか言ったところで許される気がしない。オレを呼び止めるがもうほとんど二人の世界のなのでそっと立ち去った。


一体なんだったんだ、と思いながら牛乳の紙パックにストローをさして飲みながら教室へ帰る。時計を見るがこれじゃあ、パン一個しか食べれそうにないな。



被害者 村上

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