雪間の花蜜、ひとしずく(1)
しんしんと、空から降りゆく雪…
外の物音を吸いとってしまうという
雪のためか。
それに、こんな日だから
外出する人も少ないんだろうな…。
いつもはこの時間にはわりと賑やかな
宿の前や、町屋の物音も
聞こえてこなくて。
時折行き交う人の、雪下駄の立てる
さく、さくという音だけが
静かに聞こえるだけだった。
「こら!」
ぺっちん!
「あたっ」
ー雪の降る様子を見つめていた私の
おでこに、ぺちっと手が当てられた。
ーおでこに手を当てながら
振り返ると…
「余所見をするんじゃない」
そこには。厳しい顔をした
武市さんが腕組みをしながら見つめていた。
「わっ…ごっ…ごめんなさ〜い!」
そうだった…
うっかりしていたけど、今は
勉強の最中だった…。