あまさ、ひとつぶ(12)


「百合さん。…あまり気負いすぎない
ようにしなさい」

「え…??」


声は。
とてもー優しかった。

てっきり叱られると思っていた私は
驚いて瞬きをした。

武市さんは、ゆっくりと
言った。

「君の居た時代とは、恐らく
勝手向きも、道具も習慣も
何もかも違うのだろう…

ただ、君が僕達に恩を返そうとして
毎日慣れない仕事をしてくれていることはわかっているつもりだ」


…優しい瞳。

髪を撫でている大きな手。


ーキュン…。


『ーまただ。また…』


武市さんの。夜空色の綺麗な瞳を
見たら…



わたし…っ!

ー言いたいことは。言葉にならなくて
ー私はいつしか。
涙がこみ上げてきていた。
「!百合さん…」

「っ…く、ひっく…!」

やだ。やだ。

涙…っ


「…すまない…泣かないで。百合さん」

ー困った声。

こんな優しい言葉を
かけてもらったのに…

私…

「だ、だって…だって…私…っ!
失敗ばっかり…だし…
今日も…火事を起こすなって…

き…嫌われちゃったんだって…っ」





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